拾いました。
おかしい。おかしいよ私。だって、こんな。

テレビの恋愛ドラマは終わり、エンドロールが流れているようで。知らない女の人の歌が聞こえた気がした。

………ちゅ


「んぅっ」


もうだめ。


「ひと、きぃ……っ」


これ以上は壊れる気がする。


「華留……も、俺……無理……」


今まで唇に触れていた熱が、首筋を伝い。鎖骨を流れた。


「ひぁっ! 緋刻、何し「黙って」


分からない。緋刻のその、さっきまでと違う声が私を従わせる。こんなに、こんなに……。


「恥ずか、しい……っ!」


はずなのに。


「……良い子」


ちう

大人しくなった私の前髪をさらりと上げ、軽く触れる唇。


「あ……」


どうしよう、どうしよう。


「緋、刻……っ」



たすけて。


「……華留、それ反則」


そう言って、再び首筋に寄せたかと思うと。

かりっ


「ひっ?!」


か、噛まれた?!


「華留、今の声……可愛い……」


「緋刻やめ……」


かりりっ


「ぁっ!」


どこから出ているの、この声は。私の声じゃないみたい。高くて、少し鼻にかかったみたいな。

かり かりっ


「あ、や……緋刻、いた……っ」


「ごめん、痛かった……? 華留ごめん……止められない」


違う。痛くなんてなかった。ただ、私がおかしくなりそうで、怖くて。


「華留、好き……大好き…」


やめて、だめ、流されてしまう。

かりっ ……ちゅ


「や、あ……っ!」


甘い痺れと痛みを感じ、私の意識は途絶えた。

そんな二人を眺めるかのように。綺麗な三日月が、夜空に輝いている……――。
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