色褪せて、着色して。~リリアン編~
 私の予想では、カレン様だったのに。
 目の前にいるのは、ルピナス様だった。
 安堵したと同時に、私はカレン様が入って来るのではないかとドアを確認した。
 でも、誰も入ってこない。
「お一人ですか?」
 ルピナス様は、どういうわけか国家騎士団の制服を着ていた。
 6歳…だっけ?
 西日のせいで、胸元のエンブレムの色がよくわからない。
 ルピナス様は黙って、サングラスを外したので。
「あっ」と私の方が声を出してしまった。

「ルピナス様、どうして・・・」
 どうしてお一人なのです?
 どうして、サングラスを外したのです?
 どうして、私をこんなところに閉じ込めたのです?

 溢れ出る質問があるはずなのに。
 私は声が出なかった。
 ルピナス様の身長に合わせてしゃがみ込む。
 ルピナス様の素顔を見るのは久しぶりだけど。
 なんて凛々しい顔立ちなのだろう。
 こうやって真正面から見ると、ローズ様に似ている。

「マヒル」

 一瞬、誰が喋ったのだろうと思い、部屋を見回した。
 天井を見上げて。
 再びルピナス様を見た。
 ルピナス様は無表情でまた、「マヒル」と言った。
「喋れるんですか?」
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