色褪せて、着色して。~リリアン編~

恒例の呼び出し

 朝食後。
 いつものように、バニラが淹れてくれた紅茶を飲んでいると。
 外から「ごめんください」という男性の声がした。
 私とバニラは顔を見合わせた。
 …これは、バニラでなくてもわかる。
 嫌なことが起きる前兆だ。

 かといえ、無視することなんて、出来るはずもなく。
 バニラが玄関へと向かった。
「まあ、ジャック様!!」
 ダイニングルームにいた私に聞かせるように、バニラは大きな声で言った。
 私は慌てて、玄関に向かう。
 どれくらい会っていなかったのだろう?
 我が家に不幸を招く役割を担うのは、たいていクリス様だったけど。
 今回、玄関前に立っているのは、太陽様の同期であるジャックさんだ。
 騎士というよりか、どう見てもホストクラブで働いていそうな顔をしているジャックさんは、真剣な顔で私を見ている。
 その顔を見て、ああやっぱり嫌なことが起きるんだわと確信した。

「朝から申し訳ない。ある方がマヒル様をお呼びです」
 ジャックさんはぺこりと頭を下げた。
「ある方・・・ね」
 名前を濁している時点で、王族の誰かだってことかは予想がついた。
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