色褪せて、着色して。~リリアン編~
 バニラに留守番を頼んで。
 私とジャックさんは馬車に乗った。
「でも、意外でした。たいてい、呼び出されるときに案内してくれるのはクリス様でしたから」
 目の前に座るジャックさんは姿勢よく座って私を見ている。
 国家騎士団はざっくり言うと、肉体班と頭脳班にわかれていて。
 その見分けをつける方法の一つが胸元の刺繍の色だ。
 肉体班は赤、頭脳班は紺色。
 そのどちらにも当てはまらないクリス様は白い刺繍の制服を着ていた。
 ジャックさんは頭脳班なので、胸元の刺繍は紺色だ。
「城は今、ごった返していまして。クリス様は多忙ゆえ、僕が来た次第です」
 淡々と話すジャックさんに、あれ? と思ったのは気のせいか。
 どっちかと言えば冷静沈着で。
 時折、毒を含む言い方をするジャックさんなのに。
 どこか様子がおかしいのがわかった。

 こちらから、理由を聞いたところで、どうなるわけでもないし。
 首を突っ込みたくない。
 ろくなことがない。
 だから、私は何も尋ねない。

 馬車は結構な速度で走り抜けて。
 厳重な警備の元、奥へと進んで行った。
 お城に行くのか、また宮殿なのか…。
 ジャックさんが黙り込んでしまったので。
 私も黙った。
 空気が重たい。

 窓の外を見たかったけど。
 途中で、ジャックさんがカーテンを引いたせいで見えなくしてしまった。
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