色褪せて、着色して。~リリアン編~

何のために

 ドアの前で叫び続けていたけど。
 応答がなかったので、「あー」と声をあげた。

 本当に王族と関わると、(ろく)なことがない!
 もう、王家には関わらないって言ってあるはずなのに。
 なんなんだ!!!

「ピアノがあるってことは、弾けってことですかあ?」
 返事がないとわかっているけど。
 声に出してしまう。
「もう、弾いちゃいますからねー。騒音だって文句言わないでくださいねー」

 ピアノの前に座って。
 椅子の高さを調節する。
 腹が立っていたので激しめの曲を弾いてやった。

 一曲弾き終えると。
 激高した気持ちは幾らか落ち着いた。

 立ち上がって、ドアを開けてみようとしたけど。
 やはり、鍵がかかっている。
 どういうこと?
 私を閉じ込めて、何をしようと企んでいるの?

 目の前にあるのはグランドピアノ。
 ほかには、何もない。
 正方形の窓があって近寄るけど、ここは2階。
 バルコニーがあるわけでもなく、外には人の気配はない。
 念のため、窓を開けようとしたけど開かない…。
 椅子を使って割ってやろうかと思ったけど器物損害で訴えられるかもしれないという考えがよぎった。
 王家の…建物。

 毎回、思う。
 酷い目に遭うけど。
 私がどうあがいても、どうすることも出来ない。
 がっくりとうなだれて、再びピアノの前に座る。

 底知れない不気味な未来が近寄ってくる。
 一体、誰が?
 ローズ様? いや、こんなことしない。
 蘭様? うーん…ビミョーだな。
 じゃあ、お妃様。
 うーん、考えたくない。

 何故、ピアノのある部屋に閉じ込める?
 なんの意味があるの?
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