色褪せて、着色して。~リリアン編~
 考えても仕方ないので。
 ピアノを弾き続ける。
 とにかく、弾き続け。疲れたら立ち上がって部屋をうろうろと歩き回って。
 また、弾き続ける。

 時計がないので時間の流れがわからない。
 太陽の動きから見て、結構時間が経ったのではないか。
 さすがに、くたびれてピアノに頭を乗せて「あー」とため息をついていると。
 何の前触れもなく誰かが入ってきた。

「マヒル様。お疲れのところ申し訳ありませんが、身支度をお願いします」

 しゃきっとしたバニラの声に。
 夢を見ているのかと思い、まばたきをする。
「私の目の前にいるのは、バニラ?」
「さようでございます。マヒル様。申し訳ございませんが、時間がありませんので」
 バニラはそう言うと私に移動するように言った。

 考えすぎて疲れ果てていた私は、バニラに言われるがまま部屋を出た。
 隣の部屋に入ると、
「さ、お着換えください」
 とバニラに着替えるように言われた。
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