婚約破棄されました。慰謝料の卵から子供が生まれました!?家族に見捨てられた家ナシ令嬢は、女嫌いの王弟に溺愛される(1話だけ大賞)
「レーナ・イソラ! おまえとの婚約を破棄する!」
王宮主催の夜会で婚約破棄を告げられたレーナは息が止まりそうになった。
目の前にはなぜか義妹とペアのタキシードを着ている私の婚約者アドルフと、大きなネックレス、イヤリング、派手な頭飾りをつけた義妹のエミリア。
二人はべったりくっつき、まるで恋人同士のようだ。
「おまえがエミリアにしたことは全部聞いた!」
「アドルフさまぁ。お姉さまは反省していると思うの。だから、どうか婚約破棄だけは……」
グイグイと自慢の大きな胸を押しつけながら、あざとい角度で見上げるエミリアの胸の谷間に鼻の下を伸ばしているアドルフにレーナは苦笑する。
「あぁ、泣かないでくれエミリア」
エミリアの頬にそっと手を置きながら視線は胸に釘付けの残念な婚約者にレーナは溜息しか出なかった。
「かわいそうに。ドレスを引き裂かれるなんて辛かっただろう」
手に擦り寄るエミリアを愛おしそうに見つめながら、アドルフは周りの同情を誘う。
待って。ドレスをハサミでぐちゃぐちゃに切り裂かれたのは私ですけど?
そのせいで今日の私は流行遅れのドレスですけど?
髪飾りもネックレスもすべて奪われ、何もないですけど?
「こんな素敵なドレスを作ってもらえてうれしいです。でも……」
エミリアは涙を浮かべながら渾身の演技中のようだ。
「アドルフさまとペアみたいで、お姉さまに申し訳なくって……」
「気にしなくていい」
アドルフは心配しなくていいよと優しくエミリアを抱き寄せた。
「おまえはエミリアに床掃除や洗濯をやれと命じたそうだな」
それは私が毎日やらされていることです。
「雨の日に、今すぐクッキーを買ってこいと命じたり」
エミリアにどうしても王都の東西通りの限定クッキーが食べたいと言われ、雨の中ずぶ濡れで買いに行ったのは私です。
「紅茶がマズいと投げつけたり」
熱い紅茶をかけられて火傷をしたのは私!
さっきから何なのだろうか。
この言いがかり。
すべて私がされていたことではないか。
「アドルフ様、私はそのようなことをしておりません」
レーナは深呼吸し、凛とした態度で反論する。
「アドルフさまぁ、お姉さまの言葉を信じないでっ」
零れ落ちそうな胸を押し付けながらエミリアが見上げると、アドルフは「わかっている」と答えながらレーナを睨みつけた。
「嘘をつくな、レーナ! 男爵夫人からもおまえの悪事は聞いている」
「お義母様から?」
「装飾品を売り飛ばし、自分が贅沢をするために使い込んだそうだな」
「そのようなこと!」
私は売り飛ばすような装飾品などひとつも持っていないのに何を売れというのか。
「あらぁ、サファイアのネックレスが高値で売れたと言ってたじゃないの、お・ね・え・さ・ま」
ニヤニヤと笑うエミリアの言葉にレーナは目を見開いた。
サファイアのネックレスは亡くなった母の形見のことだ。
毎日眠る前にネックレスを眺め、母に一日の報告をしてから眠るのに、昨日探したがどこにもなかった。
大切なネックレスをまさか売ってしまっただなんて。
「どうして」
レーナはエミリアに勢いよく近づいた。
触れてもいない。
ただ近づいただけなのに。
「きゃっ」
「エミリアに触れるな!」
大げさにリアクションするエミリアを庇ったアドルフに突き飛ばされ、転んだのはレーナの方だった。
背中がテーブルにぶつかったレーナはうめき声を上げながら、その場に尻もちをついた。
テーブルの上に置いてあったワイングラスが倒れ、髪もドレスもワインで汚れる。
ポタポタと垂れ続けるワイン。
レーナは周りにくすくすと笑われた。
「んまぁ、みっともない娘だこと」
「お義母様……」
エミリアに負けず劣らず派手なドレスを身にまとった義母に見下ろされたレーナは床についた手を震わせた。
「母のネックレスを売ってしまったというのは本当ですか……?」
「二束三文の古くさい物のことを言っているなら売ったわ。大したお金にはならなくてガッカリよ」
「どうしてですか! どうしてそんな」
「いらないものを捨てただけよ」
くやしそうに唇を噛むレーナのドレスを義母はグッと踏みつける。
「婚約破棄されただけではなく、王家主催の夜会でこんな姿をさらすなんて。おまえのような義娘は二度と家に帰ってこないでちょうだい!」
ニヤニヤ笑うエミリア、くすくす笑う人々、睨みつける義母。
私の味方は誰もいない。
アドルフは目についたテーブルの上の装飾品に手を伸ばした。
飾りの中から卵のような丸い飾りを手に取ると、床に座り込んだままのレーナのドレスの上にひょいと放り投げる。
「それ、婚約破棄の慰謝料ってことで」
こんなもので婚約が破棄されて、こんなに笑いものにされて、惨めな思いをして、頭もドレスもワインでベタベタで、母の形見まで勝手に売られて、家にも帰ってくるな?
そんなのあんまりではないか。
私が貴方たちに何をしたというのか。
アドルフとの婚約は5歳のころから決まっていたし、7歳の時、母が亡くなったのは私のせいではないし、8歳で後妻としてやってきた義母と連れ子になぜ私が虐げられなくてはならないのか。
「アドルフ様、こんな出来損ないの義娘に慰謝料までいただくなんて。ありがとうございます」
「お姉さま、慰謝料ですって。それを持って今すぐどこかに消えてくださらない?」
もうこんな人たちの近くには居たくない。
外交で三年帰ってこない父が戻るまでは我慢しようと思っていたけれど、もう無理だ。
レーナは涙を堪えながら、震える手で卵を掴んだ。
◇
王宮の夜会会場から離れた宝物庫の前には、バタバタと走り回る騎士たちの姿があった。
剣、絵画、宝石が綺麗に並べられた宝物庫の中に置かれた空っぽのケースをウィルヘルムは震える手で掴む。
「なぜないんだ!」
ケースの中は窪んだクッションのみ。
卵がすっぽりと入りそうな形だけがあいている。
この宝物庫は鍵がかかっており、誰かが気軽に忍び込めるような場所ではないのに。
「一体どこに……」
ヴィルヘルムは額を押さえながら困った表情で周りを探す。
「あれは国に禍をもたらす悪しき精霊を封印したものなのに……」
見た目は卵のようだが、中身は最悪だ。
早く見つけ出さなければ。
「夜会に参加している者たちの持ち物検査をしろ!」
「はい! ヴィルヘルム王弟殿下」
指示を伝えに夜会会場へ走っていく騎士たちを見ながら、ヴィルヘルムは困ったことになったと眉間にしわを寄せた。
◇
「慰謝料が卵なんて馬鹿にしすぎじゃない?」
レーナは卵を握りしめ、泣きながら王宮を出た。
ワインがかかったドレスを着て、徒歩で帰る私に声をかける守衛は誰もいなかった。
とりあえず慰謝料の卵を持って王宮を出たけれど、そもそもこれは食べられるのだろうか?
今の自分には汚れたドレスと髪を拭く手段も、乗って帰る馬車も、帰る場所もない。
持っているのは卵一個だけだ。
「許せない」
母の形見のネックレスを売ってしまった義母も、私に嫌がらせすることしか考えていない義妹も、私という婚約者がいるのに義妹と恋仲になった元婚約者も。
全員最低だ。
レーナは真っ暗な道を進み、森の入り口へやってきた。
森の中はさらに暗く、ふくろうの声が響いて怖い。
でも夜会が終われば多くの馬車が通過するこの道沿いにいることはできない。
レーナは手探りで暗い森の中を進むしかなかった。
大きな木の下に座り、卵を膝の上に置くと、気のせいか卵が動いたような気がした。
「そんなはずないよね」
たまたまドレスの上を転がっただけだろうと思いながらも眺めていると、コクンと卵が動く。
「うそでしょ! ひよこになったら餌とかどうすればいいの?」
明日の朝食のゆで卵の方がうれしかったのに。
そんな馬鹿なことを考えている間に、卵はピキピキと音を立てて割れ始める。
そろそろくちばしか羽根が……?
……あれ?
どうしよう。思っているものと違う。
卵から出ているのは小さな手。
ありえないほど小さな手だ。
卵から人が生まれるなんて聞いたこともない。
夢かな。夢だよね。
森の木の下で眠ってしまったんだ。
明日の朝になったらゆで卵を食べて、どこか働けるところを探しに行って……。
どんどん割れる卵の中から手だけではなく、腕も肩も、とうとう金髪まで見え始めてしまった。
それに背中にはトンボのような羽根がある。
「婚約破棄がショックだったからって、こんな変な夢を見るなんて」
思った以上に動揺していたみたいだ。
「ママ!」
目の前を飛んでいる小さな子の綺麗な緑眼と目が合ったレーナは苦笑する。
たとえ夢でもママは無理!
「許せないよね。あいつら」
ブワッと黒い煙が広がったと思った瞬間、羽根が生えていた小さな子は人間の赤ちゃんの姿に。
待って。
今日はむちゃくちゃすぎる!
卵から生まれたのも十分変だけれど、羽根が生えた小さい子がどうして赤ちゃんに変わるの!?
「うわぁぁぁぁん、うわぁぁぁぁん」
「こんなの絶対無理!」
自分だけでも明日からどうやって生きていけばいいのかわからないのに、赤ちゃんを連れてなんて生きていけるはずがない。
大声で泣きながら膝の上にゴロンと転がる赤ちゃんにレーナは顔面蒼白になった。
王宮主催の夜会で婚約破棄を告げられたレーナは息が止まりそうになった。
目の前にはなぜか義妹とペアのタキシードを着ている私の婚約者アドルフと、大きなネックレス、イヤリング、派手な頭飾りをつけた義妹のエミリア。
二人はべったりくっつき、まるで恋人同士のようだ。
「おまえがエミリアにしたことは全部聞いた!」
「アドルフさまぁ。お姉さまは反省していると思うの。だから、どうか婚約破棄だけは……」
グイグイと自慢の大きな胸を押しつけながら、あざとい角度で見上げるエミリアの胸の谷間に鼻の下を伸ばしているアドルフにレーナは苦笑する。
「あぁ、泣かないでくれエミリア」
エミリアの頬にそっと手を置きながら視線は胸に釘付けの残念な婚約者にレーナは溜息しか出なかった。
「かわいそうに。ドレスを引き裂かれるなんて辛かっただろう」
手に擦り寄るエミリアを愛おしそうに見つめながら、アドルフは周りの同情を誘う。
待って。ドレスをハサミでぐちゃぐちゃに切り裂かれたのは私ですけど?
そのせいで今日の私は流行遅れのドレスですけど?
髪飾りもネックレスもすべて奪われ、何もないですけど?
「こんな素敵なドレスを作ってもらえてうれしいです。でも……」
エミリアは涙を浮かべながら渾身の演技中のようだ。
「アドルフさまとペアみたいで、お姉さまに申し訳なくって……」
「気にしなくていい」
アドルフは心配しなくていいよと優しくエミリアを抱き寄せた。
「おまえはエミリアに床掃除や洗濯をやれと命じたそうだな」
それは私が毎日やらされていることです。
「雨の日に、今すぐクッキーを買ってこいと命じたり」
エミリアにどうしても王都の東西通りの限定クッキーが食べたいと言われ、雨の中ずぶ濡れで買いに行ったのは私です。
「紅茶がマズいと投げつけたり」
熱い紅茶をかけられて火傷をしたのは私!
さっきから何なのだろうか。
この言いがかり。
すべて私がされていたことではないか。
「アドルフ様、私はそのようなことをしておりません」
レーナは深呼吸し、凛とした態度で反論する。
「アドルフさまぁ、お姉さまの言葉を信じないでっ」
零れ落ちそうな胸を押し付けながらエミリアが見上げると、アドルフは「わかっている」と答えながらレーナを睨みつけた。
「嘘をつくな、レーナ! 男爵夫人からもおまえの悪事は聞いている」
「お義母様から?」
「装飾品を売り飛ばし、自分が贅沢をするために使い込んだそうだな」
「そのようなこと!」
私は売り飛ばすような装飾品などひとつも持っていないのに何を売れというのか。
「あらぁ、サファイアのネックレスが高値で売れたと言ってたじゃないの、お・ね・え・さ・ま」
ニヤニヤと笑うエミリアの言葉にレーナは目を見開いた。
サファイアのネックレスは亡くなった母の形見のことだ。
毎日眠る前にネックレスを眺め、母に一日の報告をしてから眠るのに、昨日探したがどこにもなかった。
大切なネックレスをまさか売ってしまっただなんて。
「どうして」
レーナはエミリアに勢いよく近づいた。
触れてもいない。
ただ近づいただけなのに。
「きゃっ」
「エミリアに触れるな!」
大げさにリアクションするエミリアを庇ったアドルフに突き飛ばされ、転んだのはレーナの方だった。
背中がテーブルにぶつかったレーナはうめき声を上げながら、その場に尻もちをついた。
テーブルの上に置いてあったワイングラスが倒れ、髪もドレスもワインで汚れる。
ポタポタと垂れ続けるワイン。
レーナは周りにくすくすと笑われた。
「んまぁ、みっともない娘だこと」
「お義母様……」
エミリアに負けず劣らず派手なドレスを身にまとった義母に見下ろされたレーナは床についた手を震わせた。
「母のネックレスを売ってしまったというのは本当ですか……?」
「二束三文の古くさい物のことを言っているなら売ったわ。大したお金にはならなくてガッカリよ」
「どうしてですか! どうしてそんな」
「いらないものを捨てただけよ」
くやしそうに唇を噛むレーナのドレスを義母はグッと踏みつける。
「婚約破棄されただけではなく、王家主催の夜会でこんな姿をさらすなんて。おまえのような義娘は二度と家に帰ってこないでちょうだい!」
ニヤニヤ笑うエミリア、くすくす笑う人々、睨みつける義母。
私の味方は誰もいない。
アドルフは目についたテーブルの上の装飾品に手を伸ばした。
飾りの中から卵のような丸い飾りを手に取ると、床に座り込んだままのレーナのドレスの上にひょいと放り投げる。
「それ、婚約破棄の慰謝料ってことで」
こんなもので婚約が破棄されて、こんなに笑いものにされて、惨めな思いをして、頭もドレスもワインでベタベタで、母の形見まで勝手に売られて、家にも帰ってくるな?
そんなのあんまりではないか。
私が貴方たちに何をしたというのか。
アドルフとの婚約は5歳のころから決まっていたし、7歳の時、母が亡くなったのは私のせいではないし、8歳で後妻としてやってきた義母と連れ子になぜ私が虐げられなくてはならないのか。
「アドルフ様、こんな出来損ないの義娘に慰謝料までいただくなんて。ありがとうございます」
「お姉さま、慰謝料ですって。それを持って今すぐどこかに消えてくださらない?」
もうこんな人たちの近くには居たくない。
外交で三年帰ってこない父が戻るまでは我慢しようと思っていたけれど、もう無理だ。
レーナは涙を堪えながら、震える手で卵を掴んだ。
◇
王宮の夜会会場から離れた宝物庫の前には、バタバタと走り回る騎士たちの姿があった。
剣、絵画、宝石が綺麗に並べられた宝物庫の中に置かれた空っぽのケースをウィルヘルムは震える手で掴む。
「なぜないんだ!」
ケースの中は窪んだクッションのみ。
卵がすっぽりと入りそうな形だけがあいている。
この宝物庫は鍵がかかっており、誰かが気軽に忍び込めるような場所ではないのに。
「一体どこに……」
ヴィルヘルムは額を押さえながら困った表情で周りを探す。
「あれは国に禍をもたらす悪しき精霊を封印したものなのに……」
見た目は卵のようだが、中身は最悪だ。
早く見つけ出さなければ。
「夜会に参加している者たちの持ち物検査をしろ!」
「はい! ヴィルヘルム王弟殿下」
指示を伝えに夜会会場へ走っていく騎士たちを見ながら、ヴィルヘルムは困ったことになったと眉間にしわを寄せた。
◇
「慰謝料が卵なんて馬鹿にしすぎじゃない?」
レーナは卵を握りしめ、泣きながら王宮を出た。
ワインがかかったドレスを着て、徒歩で帰る私に声をかける守衛は誰もいなかった。
とりあえず慰謝料の卵を持って王宮を出たけれど、そもそもこれは食べられるのだろうか?
今の自分には汚れたドレスと髪を拭く手段も、乗って帰る馬車も、帰る場所もない。
持っているのは卵一個だけだ。
「許せない」
母の形見のネックレスを売ってしまった義母も、私に嫌がらせすることしか考えていない義妹も、私という婚約者がいるのに義妹と恋仲になった元婚約者も。
全員最低だ。
レーナは真っ暗な道を進み、森の入り口へやってきた。
森の中はさらに暗く、ふくろうの声が響いて怖い。
でも夜会が終われば多くの馬車が通過するこの道沿いにいることはできない。
レーナは手探りで暗い森の中を進むしかなかった。
大きな木の下に座り、卵を膝の上に置くと、気のせいか卵が動いたような気がした。
「そんなはずないよね」
たまたまドレスの上を転がっただけだろうと思いながらも眺めていると、コクンと卵が動く。
「うそでしょ! ひよこになったら餌とかどうすればいいの?」
明日の朝食のゆで卵の方がうれしかったのに。
そんな馬鹿なことを考えている間に、卵はピキピキと音を立てて割れ始める。
そろそろくちばしか羽根が……?
……あれ?
どうしよう。思っているものと違う。
卵から出ているのは小さな手。
ありえないほど小さな手だ。
卵から人が生まれるなんて聞いたこともない。
夢かな。夢だよね。
森の木の下で眠ってしまったんだ。
明日の朝になったらゆで卵を食べて、どこか働けるところを探しに行って……。
どんどん割れる卵の中から手だけではなく、腕も肩も、とうとう金髪まで見え始めてしまった。
それに背中にはトンボのような羽根がある。
「婚約破棄がショックだったからって、こんな変な夢を見るなんて」
思った以上に動揺していたみたいだ。
「ママ!」
目の前を飛んでいる小さな子の綺麗な緑眼と目が合ったレーナは苦笑する。
たとえ夢でもママは無理!
「許せないよね。あいつら」
ブワッと黒い煙が広がったと思った瞬間、羽根が生えていた小さな子は人間の赤ちゃんの姿に。
待って。
今日はむちゃくちゃすぎる!
卵から生まれたのも十分変だけれど、羽根が生えた小さい子がどうして赤ちゃんに変わるの!?
「うわぁぁぁぁん、うわぁぁぁぁん」
「こんなの絶対無理!」
自分だけでも明日からどうやって生きていけばいいのかわからないのに、赤ちゃんを連れてなんて生きていけるはずがない。
大声で泣きながら膝の上にゴロンと転がる赤ちゃんにレーナは顔面蒼白になった。