【1話だけ大賞】出会ったのはあの人気俳優
出会ったのはあの人気俳優
「悪い!ちょっと、一緒に来てくれ!」
「ええっ!? ちょ、ちょっと!なんですかっ……!?」
私は急に誰かに腕を捕まれ、走らされていた。
「ちょっと!どこまで行くんですか!?」
「いいから黙って俺に着いてこい!」
買い物の帰りに何故か急に誰かに腕を捕まれたと思いきや、そのまま走らされているのは主人公である私草木雪加だ。
今私は、どこの誰かもわからない見知らぬ男の人に腕を引かれながら走っている。
(はあ……はあ……もう無理! これ以上走れないよっ!)
心の中でそんなことを思いながらも、ただひたすら走り続けた。
「はあ、はあ……つ、疲れたっ……。もう無理!」
どのくらい走ったかわからないけど、ここはどこだか知らない場所である。
(えっ!? ちょっと、ここどこっ……!?)
「ほら、飲め」
一緒に走らされた人が、私にペットボトルのお水を渡してくれる。
「あ、ありがとう、ございます……」
息が切れてしまってうまく呼吸が出来ない。
「お、美味しい……」
あんなに走ったのは、きっと学生の時以来だ。走りすぎて脇腹が痛い。
「つ、疲れた……」
近くにあったベンチに腰掛け直すと、その人は「大丈夫か? すごい息が切れてるけど」と私の隣に座る。
「あ、あの……急になんですか!? 私の腕引っ張って走り出すとか、意味がわかりませんけど!」
「悪い。たまたまそこにいたのがアンタだったから」
「はい?」
水を飲みながら隣にいるその人の横顔を見ると、横顔が結構カッコイイと思ってしまった。
(って……! 私ってば、なんでときめいてるのよ!
ときめいてる場合じゃないじゃない……!)
「そもそも、なんで逃げてたんですか? ていうか、あなたは一体誰から逃げてたんですか?」
私がそう聞くと、その人は「俺が逃げてたのは、記者からだ」と答えた。
「記者……って、あの記者ですか?」
「ああ。記者がしつこく俺に付きまとってきたから、思わずアンタの手を引いて逃げてきちまったって訳だ」
「え? そもそもあなたはなんで記者になんて、追われてるんです?」
私はこの人が記者から逃げてる理由がわからなくて、そう聞いてしまった。
この人があの有名な゙あの人゙だとは思わずーーー。
「は? アンタ、俺のこと知らないのか?」
「え、知らないって……何がですか?」
「そうか。 なら教えてやるよ」
その人は私の目の前で、付けていたマスクと被っていた帽子を外したーーー。
「……っ!?」
(えっ!? う、ウソッ……!?)
私はその人の顔を見てビックリしすぎて、声が出なくなった。
「これでも、俺のことを知らないって言えるか?」
「あ……あ、あ、あなたは……!」
やばい。今目の前にあるこの現実を受け入れるのに、時間がかかる。
「あ、あなたは……槇嶋紫園!?」
それは今ドラマや映画などで引っ張りだこの大活躍中の人気俳優、槇嶋紫園だった。
「まあやっぱり、俺のことを知ってるよな。 だって俺、今をときめく超人気俳優だし?」
「……これは夢ですか?」
「夢な訳ないだろ。現実だ」
わ、私……槇嶋紫園の大ファンなんですけどー!
【1話だけ大賞完】