あたしの好きな人は先生?!
またドアが開いて、白衣の男の人が入ってきた。

「優香。あなたの主治医の先生よ。」

またお母さんがさりげなく教えてくれる。

「先生!!優香の記憶が……記憶がないんです!!」

お母さんの言葉の最後のほうは涙で聞き取れないくらいだった。

お医者さんは優しく話しかけてくれる。

「優香さん、自分の名前がわかりますか??」

「……わかりません。」

「では、もう一つだけ聞きます。鎌倉幕府が成立した年を覚えていますか??」

?????

「1192年です…。」

お母さんが不思議そうにお医者さんに聞く。

「あの…この質問にどういう意味があるんですか??」

お医者さんは少し考えて答えてくれる。

「優香さんはおそらく……過度のストレスにより、自分や人に関する記憶がなくなったと考えられます。」

「戻ることはないのですか?!」

「何かきっかけがあれば……。可能性はあります。」

「良かった…。」

あたしの後ろで小さく戸波先生がつぶやく。

その時は、学校の先生として、担任の先生として良かったって言ってると思ってた。







でも、違ったんだね。

あなたは、こんなあたしを愛していてくれてたんだね。













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