私がヤンキー校の勝利の女神!?
11
目を覚ますと、私は椅子に縛り付けられていた。
でも、あまりしっかりと縛っていなかったようで、ロープは緩々としている。
足首や手首も縛られてはいるが、跡がつかないようにしているのか緩めだった。
「お兄ちゃんに見つかったら怖いから?」
きつく縛って痣にでもなっていたら、きっと兄は容赦しないだろう。
だが、兄を恐れていながら私を人質にする計画を立てているのは不思議だ。
主犯は別にいて、もしかしたら気にしていないのかもしれない。
体を動かしロープを下の方へとずらしていく。前腕まできたところで腕を抜こうと動かす。
刃物があればなぁ。と思ったりもするが、いつでも持ち歩いているわけもなく。
やっとの思いで引き抜いた腕でまず足のロープを解く。そして体を縛っているロープを足に動かして立ち上がることに成功した。
だが、手首のロープだけはどうしても解くのが難しい。
しょうがないので一旦このまま行動しよう。
教室から出ようと扉に手をかけたが鍵が閉まっている。
内側の鍵を開けてみても開かない。何か細工をしているのかもしれない。
ベランダ側の出入り口の鍵を開け、外に出る。隣の2組は開いてないか、1組はどうかと行ってみたがどこも鍵が閉まっていた。
3年は3階に教室があるため、ここから飛び降りる……なんてことは現実的ではない。
手も思うように動かせない今あまり軽率な判断もできない。
「3人が心配だし、悠長にしてられないよね」
3組の教室に戻り使えるものはないか探したが何も収穫はなかった。
「誰かー、誰かいませんかー! 閉じ込められちゃいました!」
扉を叩き、できるだけ大きな声で助けを呼ぶ。敵でも味方でもどっちでもいいから呼ぼう。そして開けてもらおう。
すると「縛ってるはずなのになんで扉を叩いてる音がするんだ?」と私が叩いていた扉を開けた。
私と目が合った男子は、驚きで一瞬怯む。その隙に勢いよくお腹へ頭突きをして私は廊下を走る。
「扉開けてくれてありがとうございました!」
「はあ!? くそっ、逃すかよ!」
尻餅をつきその場で放心状態だった男子は私の感謝の言葉に青筋を立て、お腹をさすりながら立ち上がる。
両手が使えない状況では速度が出ない。このままではすぐに捕まってしまう。
どこかでやり過ごそうと階段を降り2階のトイレに逃げ込んだ。
「そんなところに逃げ込んでも勝ち目はないぞ」
勝ちを確信しているのだろう。嬉しそうな笑い声を出している。
まだ私の視界に入ってこないことから、息を整えてから入ろうと考えているのかもしれない。
まさか私がここの窓から降りるとは思っていないのがよくわかる。
開いているまどから飛び降り、すぐ下にある倉庫の上に降りる。見つからないように、落ちないようにゆっくりと移動して屋根から降りる。
「……ふぅ。あとは体育館裏に行くだけだね」
手首のロープはゆっくり外そう。辺りを警戒しながら行動し、体育館裏近くまでやっと辿り着いた。
警備というほどではないが、ちらほらと目を光らせている男子がいるのを見かけた。
きっと逃げ出した私を捕まえるためだろう。
「お前らの勝利の女神は俺たち3組がいただいた!」
大声で話す男子。「ボス!」と言っている人がいることから3組でボスを名乗っているようだ。
ボスは、眞大君と真君、天海君を嘲笑うように大きく笑っていた。
あれ? 天海君戻ってきたんだ。私が連れて行かれたから?
不謹慎にもちょっと嬉しいなどと思ったが、3人の怪我を見て私は一瞬にして血の気が引いた。
「俺にトップの座とあの女を渡せばこのまま返してやるよ」
「嫌だと言ったら?」
真君の発言に、ボスは真君のお腹に蹴りを入れる。
「自分の立場を弁えろ。たかが1組になったからって調子に乗りやがって」
「あいつは、一華は無事なんだろうな? 怪我とかしてないよな?」
「安心しな。眠らせて縛ってるだけだ」
「いや、思いっきり殴ってたじゃん。痣になったらどうすんの。あの子の兄貴怖いよ?」
「知らねぇよ。俺がやったわけじゃねぇから関係ない」
「連帯責任だよ。僕から一華のお兄さんに言っておくね」
「……脅してるのこっちなんだが?」
なんで俺が脅されてんだと言いたげな表情。眞大君はいつでも物腰柔らかなのに強気だ。
……そんなことはいいとして、どうにかして私が逃げ出していることを気づかせないといけない。
きっと安全な場所にいることがわかれば、あのように大人しく従う理由もなくなるはずだ。
どうやって気づかせようか。
「ボス! あの女が逃げた!」
「はぁ!? しっかり体縛って部屋鍵かけてたんじゃないのか!?」
「それが……痣が残らないように縛ったせいでロープは緩くて、鍵は俺が開けちまって」
「なんでだよ! あいつの兄貴が怖くてトップなんてなれるか!」
いきなり口喧嘩が始まった。
その隙に私は遠くから小石を3人の方向へと投げる。
近くまで投げられたらいいと思っていたが、うまく飛ばせず距離がある。
気付かないかもと心配していたが、真君がこちら側を見てくれたので物陰から手を振る。
真君は私を見て頷いた。気づいてもらえてよかった。
「一華は自力で逃げたっていうし、俺らももう暴れてもいいよな?」
「そうだね。天海には後でお説教があるから逃げないでね」
「げっ、助っ人に来ただけマシだと思ってほしい〜」
3人は立ち上がり、やる気満々の様子。
かなりの大人数だが、倒しきれるのだろうか。
と言っても、私が助太刀したところで邪魔になるだけなので、ここでひっそりと応援することしかできないのだが。
「皆、頑張って」
気づかれないように小声でそう祈った。
でも、あまりしっかりと縛っていなかったようで、ロープは緩々としている。
足首や手首も縛られてはいるが、跡がつかないようにしているのか緩めだった。
「お兄ちゃんに見つかったら怖いから?」
きつく縛って痣にでもなっていたら、きっと兄は容赦しないだろう。
だが、兄を恐れていながら私を人質にする計画を立てているのは不思議だ。
主犯は別にいて、もしかしたら気にしていないのかもしれない。
体を動かしロープを下の方へとずらしていく。前腕まできたところで腕を抜こうと動かす。
刃物があればなぁ。と思ったりもするが、いつでも持ち歩いているわけもなく。
やっとの思いで引き抜いた腕でまず足のロープを解く。そして体を縛っているロープを足に動かして立ち上がることに成功した。
だが、手首のロープだけはどうしても解くのが難しい。
しょうがないので一旦このまま行動しよう。
教室から出ようと扉に手をかけたが鍵が閉まっている。
内側の鍵を開けてみても開かない。何か細工をしているのかもしれない。
ベランダ側の出入り口の鍵を開け、外に出る。隣の2組は開いてないか、1組はどうかと行ってみたがどこも鍵が閉まっていた。
3年は3階に教室があるため、ここから飛び降りる……なんてことは現実的ではない。
手も思うように動かせない今あまり軽率な判断もできない。
「3人が心配だし、悠長にしてられないよね」
3組の教室に戻り使えるものはないか探したが何も収穫はなかった。
「誰かー、誰かいませんかー! 閉じ込められちゃいました!」
扉を叩き、できるだけ大きな声で助けを呼ぶ。敵でも味方でもどっちでもいいから呼ぼう。そして開けてもらおう。
すると「縛ってるはずなのになんで扉を叩いてる音がするんだ?」と私が叩いていた扉を開けた。
私と目が合った男子は、驚きで一瞬怯む。その隙に勢いよくお腹へ頭突きをして私は廊下を走る。
「扉開けてくれてありがとうございました!」
「はあ!? くそっ、逃すかよ!」
尻餅をつきその場で放心状態だった男子は私の感謝の言葉に青筋を立て、お腹をさすりながら立ち上がる。
両手が使えない状況では速度が出ない。このままではすぐに捕まってしまう。
どこかでやり過ごそうと階段を降り2階のトイレに逃げ込んだ。
「そんなところに逃げ込んでも勝ち目はないぞ」
勝ちを確信しているのだろう。嬉しそうな笑い声を出している。
まだ私の視界に入ってこないことから、息を整えてから入ろうと考えているのかもしれない。
まさか私がここの窓から降りるとは思っていないのがよくわかる。
開いているまどから飛び降り、すぐ下にある倉庫の上に降りる。見つからないように、落ちないようにゆっくりと移動して屋根から降りる。
「……ふぅ。あとは体育館裏に行くだけだね」
手首のロープはゆっくり外そう。辺りを警戒しながら行動し、体育館裏近くまでやっと辿り着いた。
警備というほどではないが、ちらほらと目を光らせている男子がいるのを見かけた。
きっと逃げ出した私を捕まえるためだろう。
「お前らの勝利の女神は俺たち3組がいただいた!」
大声で話す男子。「ボス!」と言っている人がいることから3組でボスを名乗っているようだ。
ボスは、眞大君と真君、天海君を嘲笑うように大きく笑っていた。
あれ? 天海君戻ってきたんだ。私が連れて行かれたから?
不謹慎にもちょっと嬉しいなどと思ったが、3人の怪我を見て私は一瞬にして血の気が引いた。
「俺にトップの座とあの女を渡せばこのまま返してやるよ」
「嫌だと言ったら?」
真君の発言に、ボスは真君のお腹に蹴りを入れる。
「自分の立場を弁えろ。たかが1組になったからって調子に乗りやがって」
「あいつは、一華は無事なんだろうな? 怪我とかしてないよな?」
「安心しな。眠らせて縛ってるだけだ」
「いや、思いっきり殴ってたじゃん。痣になったらどうすんの。あの子の兄貴怖いよ?」
「知らねぇよ。俺がやったわけじゃねぇから関係ない」
「連帯責任だよ。僕から一華のお兄さんに言っておくね」
「……脅してるのこっちなんだが?」
なんで俺が脅されてんだと言いたげな表情。眞大君はいつでも物腰柔らかなのに強気だ。
……そんなことはいいとして、どうにかして私が逃げ出していることを気づかせないといけない。
きっと安全な場所にいることがわかれば、あのように大人しく従う理由もなくなるはずだ。
どうやって気づかせようか。
「ボス! あの女が逃げた!」
「はぁ!? しっかり体縛って部屋鍵かけてたんじゃないのか!?」
「それが……痣が残らないように縛ったせいでロープは緩くて、鍵は俺が開けちまって」
「なんでだよ! あいつの兄貴が怖くてトップなんてなれるか!」
いきなり口喧嘩が始まった。
その隙に私は遠くから小石を3人の方向へと投げる。
近くまで投げられたらいいと思っていたが、うまく飛ばせず距離がある。
気付かないかもと心配していたが、真君がこちら側を見てくれたので物陰から手を振る。
真君は私を見て頷いた。気づいてもらえてよかった。
「一華は自力で逃げたっていうし、俺らももう暴れてもいいよな?」
「そうだね。天海には後でお説教があるから逃げないでね」
「げっ、助っ人に来ただけマシだと思ってほしい〜」
3人は立ち上がり、やる気満々の様子。
かなりの大人数だが、倒しきれるのだろうか。
と言っても、私が助太刀したところで邪魔になるだけなので、ここでひっそりと応援することしかできないのだが。
「皆、頑張って」
気づかれないように小声でそう祈った。