ヤンデレ後輩男子の底なし溺愛包囲網からは逃げられない【一話だけ大賞参加作品】

「そう言わないと来てくれないじゃないですかあ。しかもオシャレしてきてって言ったのに」
「ごめん、これが精いっぱい」
 彩絵は苦笑いとともに応えた。オフィスカジュアルで私服OKだが、派手にするわけにもいかないし、数年ほど色恋沙汰とは縁がない――というのは言い訳であまりオシャレに興味がないため、オシャレな服を持っていなかった。
「先輩はどんな服着ててもきれいですよ」
 陽希がにこにこと笑っていう。
「翠山くんはいつもいいフォローくれるよね。ありがとう」
 彩絵もにっこりと笑って返す。お世辞を真に受けるような年齢ではないと示すように。
「俺は本気で言ってるのに」
「はいはい」
「またそうやって流して。心配だな、先輩がお持ち帰りされたらどうしよう」
「そんなことにはならないよ」
 彩絵が苦笑すると、希璃子はあきれたように言う。
「小美地さん、もっと自信もったほうがいいのに」
「ありがとう」
 合コンはありがたくはないが、心配しくれている気持ちは嬉しかった。
「なんか盛り上がってる?」
 外まわりから戻ってきた北影敬弥(きたかげたかや)が声をかけてきた。
 敬弥は営業のエースで陽希とトップを争っており、黒髪にブラックコーヒーのような瞳が印象的だ。
顔の良さもあり人気ナンバーワンを陽希と共有している。陽希派と敬弥派に分かれているが両者は仲が良い。
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