花言葉はピュア ー敏腕社長は百合のような彼女を守り抜くー
ふたたびテーブルを挟んで環と向き合った葉山は、少し間を置いたあと口を開いた。
「突然お伺いしてしまい申し訳ありません。本来ならお通夜か告別式に参列するべきだったのですが、どうしても都合がつかずこのような形でご挨拶させて頂きました。改めてお悔やみ申し上げます。」
「いえ・・・告別式といっても内輪だけで執り行いましたので、お気になさらないで下さい。」
「葬儀が終わって、もうご両親は実家へ帰られたのですか?」
葉山の言葉に環は小さく首を振った。
「父も母も早くに亡くし、親戚とも疎遠なもので・・・家族と呼べる人は誰も・・・」
唯一無二の家族である太一に先立たれ、環はひとりぼっちになってしまった。
しかし今はまだその孤独による淋しさよりも、兄を亡くしたことによる諸々の手続きに追われ、悲しむ余裕すらなかった。