花言葉はピュア ー敏腕社長は百合のような彼女を守り抜くー
「お心遣いありがとうございます。でも少しですけど貯金もありますし、なんとかひとりで頑張っていきたいと思います。兄もそれを望んでいると思いますし。」
「お兄さんは環さんが安心して暮らしていくことを望んでいると思いますよ。」
葉山はテーブルに置かれた自分の名刺を引き寄せ、胸ポケットから万年筆を引き抜くと、名刺の裏にスラスラと数字を書き込んだ。
「僕の電話番号です。もし困ったことがあったらいつでも連絡下さい。遠慮は不要です。」
「ありがとうございます。」
気持ちは嬉しいが、環はたった一度会っただけの葉山に頼ることはないだろうとそのとき思った。
外の雨はまだ降り続いていた。