異世界恋愛でしか摂取出来ない栄養がある。
私は異世界恋愛が好き……美しいドレスに高価なレースに、着飾る優雅な貴族令嬢になりたい。

 次点で、お姫様でも良い。どうしてかというと、貴族より王族の方が責任重くて大変そう。なんて嫌な計算してしまう、悲しきブラック会社員。

 ……仕方ないわ。世の中は、ままならない事が多すぎだもの。

 それに、異世界では現実世界では絶対に出会えないようなひと目見ることも難しいような、王子様と恋に落ちるのよ。

 次点として貴族令息でも良いし、騎士団長でも可。百歩譲って、大金持ちのスパダリっぽい美形の男性なら概ね可。

 世知辛い現実を忘れて、浮世離れした愛され物語に没頭出来る……そんな、うっとりとするひと時。

 それさえあるならば、私は上司の怒鳴り声にも、お局のモラハラにも、良くわからない嫌がらせを繰り返す同僚からも、意識を外して逃れることが出来る。

 あ。そういえば、そんなの居ましたっけ? となるように、高原で新鮮な空気を深呼吸したような気持ちを新たに出来る。

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