異世界恋愛でしか摂取出来ない栄養がある。
 どう例えれば良いのか……私にとってそれは、他の誰かが野菜や肉を食べるような……この汚い世界を生き抜くための、必要不可欠な栄養素補給の大切なお時間。

 これがないと、もう生きられない。

 現実逃避したいのは、現実が駄目過ぎるせいよ! 私だって普段からドレスが日常着で王子様から求婚されていたら、別にそれを物語で読みたいなんて思わないもの。

 別に誰に馬鹿にされてもぜんぜん構わない。私は異世界恋愛が、好きなのよ! 何か文句ある!? 生きるために必要なんだけど!!

 そんなこんなで延々素敵妄想して、気がつけば理想を思い描いて居たら、私はいつの間にかしがないOLから、好きだった小説の世界に居るモブ令嬢に異世界転生していた。

 転生したばかりの時には確かに驚いたけれど、すり切れるほどに数限りないほど読み返し、私以上にこの小説が好きな人間は、あの日本には居なかっただろうと言い切れるので、順当な転生先であると言えるのだと思う。

 ……願うことは無駄ではないと、元の世界の子どもたちに伝えたい。今ではもう、伝えられないけど。

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