異世界恋愛でしか摂取出来ない栄養がある。
 城の中にある庭園での出来事なので、人目は少ない。けれど、そこで起こる出来事を完全把握している私には絶好の観察スポットだったのだ。

「はー……最高なのよ。本当に……リアル『ドキデキ』最高なのよ」

 よだれをたらさんばかりに、私の顔は現在にやけていると思う。でへへ……最高な瞬間を肉眼でありがとうでございます。異世界でも生きて行けます。

「おい……何が、最高なんだ?」

 不意に男性の声が聞こえて、私は慌てて後ろを振り返った。

「あ……? あのっ……どなたでしょうか……?」

 これまでに見たことのない男性がそこに居て、私は驚いていた。

 ひと目見て驚くほどに、美しい男性だ。けれど、生粋の貴族である私の記憶には、見覚えがない……彼はこの国の王族や貴族ではないと思う。

 何故かというと、社交が仕事の貴族たちは顔や階級などを真っ先に叩き込まれるからだ。

 ……けれど、城の中に普通に居て、私の方を不審者だと言わんばかりの態度を見せる高位貴族のような男性……一体、彼は何者なの?

「……俺に名前を聞くならば、そちらが先に名乗るべきだと思うが?」

 ……これは、ただ者ではない。

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