僕は彼女をこよなく愛している
「あ、実陽!」

「るなちゃん見て〜!
るなちゃんの好きな肉まんだよ!
今日も寒いよね〜」

「あ…うん、ありがと」
(なんだ…“それで”遅かったのか)

「ん?
るなちゃん、どうした?」

「実陽がなかなか来ないから、事故に遭ったかと思って心配してたの」
かなり心配ていたのだが、その感情が顔に出ない霞月。
淡々と言った。

「え!?
ご、ごめんね!!
連絡すれば良かったね!?
ごめんね!ごめんね!」

霞月の性格を十分理解している実陽は、淡々と言われても“霞月がかなり心配してくれていた”と言うことがわかる。
慌てたように謝罪し、顔を覗きんだ。

「ううん」
首を横に振り、駅に向って歩き出す霞月。

実陽も追いかけるように霞月の横につき、歩き出した。
「るなちゃん、怒った?」
霞月の顔を窺う。

「ううん、別に」
霞月は、淡々と答えた。

「ごめんね!るなちゃん」

「だから、怒ってない」

「じゃあ、肉まん食べよ?」

「うん。でも外は寒いから、駅の中の休憩スペースに行こうよ」

「うん!わかった!
じゃあ…はい!お手々繋ご?」

実陽が手を差し出すと、霞月はキュッと握り寄り添った。

霞月は他人はもちろん、彼氏である実陽に対しても表情が殆ど変わらない。

ほぼ、無表情だ。

感情の起伏もないに等しいので、基本淡々として冷たい。

あまり怒らないし、あまり笑わない。

しかし、実陽のことが大好きだ。
なので手を繋ぐ時、必ず手を握ると実陽に寄り添う。

実陽はこの霞月の小さな愛情表現に、毎回愛しさが増す。

「るなちゃん、大好きだよ!」

「うん」

「るなちゃんは?」

「実陽のこと好き」

「フフ…!嬉しっ!
今日から、ずーっと一緒だね!」

「そうね。
でも、今日バタバタ引っ越さなくても今度で良くない?」

「えー!一日でも早く、一緒に住みた〜い!
そのために、るなちゃんの両親に事前に挨拶に行ったでしょ?」

「うん」

「だからね?
引っ越しは、変更不可です!
明日からはずーっと、片時も離れませーん!」

「それ、ウザい」

「ウザくて結構だよ!(笑)」

「私は一人の時間も欲しい」

「その時は、後ろからホールド“からの”キス責めね!
あ、僕が勝手にするから、るなちゃんはハンドメイドしてていいよ!」
 
「それ、一人の時間じゃないじゃん」

「“るなちゃんの意識は”一人の時間でしょ?」

「だから、それウザい。
ただでさえ住むとこ1Kで、プライベート空間がないのに」

「だって、離れたくないんだもん!」

互いに、一途に想い合っている実陽と霞月。
基本、ラブラブではあるが……

二人の愛情には、温度差がある。  

最初から―――――――

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