僕は彼女をこよなく愛している
「………はぁ…」

エレベーターで上がりながら、霞月はため息をついていた。
「気分、悪くしたかな…」

“また食事行こうよ”と言われた時、顔に出てしまった。

もちろん、乃庵や琢三のことが嫌いなわけじゃない。
しかし、緊張してどうしていいかわからないのだ。

それが億劫で、顔に出てしまった。


エレベーターが着き、出て家に向かう。
鍵を開けて、玄関ドアを開けると…………

「………っ…きゃっ…!!!?
び、びっくりしたぁ……
実陽、こんなとこで何してるの!!?」

実陽が玄関ドア開けてすぐの廊下に座っていたのだ。
びっくりして、思わず声を荒らげた霞月。

「あ!るなちゃん!!!」

あっという間に実陽に抱き締められ、腕の中に閉じ込められた。

「実陽、びっくりさせないでよ…」

「はぁ…良かった…やっと帰ってきてくれた……!」

「うん」

「僕、死ぬかと思ったよ……」

「は?
そんな、大袈裟な…」

「ほんとだよ」
そう言って向き直る、実陽。

「………」

「兎って、寂しいとストレスがかかって、病気になって死ぬでしょ?」

「え?あ…うん」

「それと同じ!
人間だってそうだよ、きっと。
だから、孤独に苛まれると死んじゃう人いるんだよ!」

「………」

「……ってことで、もう離れないからね!
今日は、絶対!離れない!!
じゃないと、僕死ぬからね!」 

「………」
(メンヘラだ…
実陽がメンヘラ化してる……)


リビングに向かい、座椅子に並んで座る。
大きめの座椅子なので、くっついて座れば二人座れる。
霞月とくっついていたい実陽が選んだ座椅子だ。

「フフ…可愛い///////
可愛すぎる〜!!」
霞月をうっとりと見つめ“可愛い”を連呼する、実陽。

「初めて髪の毛染めたんだけど、変じゃないかな?」

「全!然!
似合ってる!可愛い!!」

「良かった…
…………あ、そうだ。
何かお土産買って帰ろうと思ってたんだけど、乃庵くんに“それよりも早く帰ってきてほしいはず”って言われて手ぶらなの、ごめんね」

「そんな…
その気持ちだけで、嬉しい!
それに、アンくんの言う通りだし(笑)
それよりも!
チューしてい?」

「う、うん」

実陽が微笑み、顔が近づき口唇が重なる。
そのまま深くなって、実陽の口唇が頬や首、鎖骨に移動する。
「え…ちょ…実陽……!」

「ん…このままシよ…?」

「待っ…」

「僕、お利口さんに待ってたでしょ?
…………お願い…拒まないで?」

そのまま霞月は、夕食も食べずに実陽の激情を受け留めたのだった。

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