僕は彼女をこよなく愛している
「………じゃあ…ね…
終わったら、ここで待っててね?
一人で外出ちゃダメだよ?
どんな輩がいるかわからないからね。
僕が飛んで迎えに来るから!」

「うん、わかったから早く行きなよ。
琢三くんや乃庵くんが待ってるよ」

「はぁ…離れるの寂しいよぉ…」

式が終わり、今からオリエンテーションがある。
学籍番号で分かれるため、四人はバラバラだ。

案の定実陽が、霞月がオリエンテーションを行う場所まで送っていた。

「どんだけ、過保護なんだよ…(笑)」
「しかもまた、この世の別れみたいに寂しがってるし(笑)」

「「それに比べて霞月は、淡々として冷めてる(笑)」」


漸く実陽が自身のオリエンテーションに行き、霞月はホッと息を吐いて中に入った。

あいている席を探す。

「おい、見ろよ!」
「ヤバ…チョー可愛い…!」

「ねぇ、ここ!あいてるよ!」

霞月の美しさに、講義室内がざわつく。
そんな中、男子学生が自身の隣の席を指差した。

「………」
(行きたくない…けど……そこしかあいてないし…)

仕方なく霞月は「すみません」と隣に座った。

「ねぇねぇ、名前何てーの?」
「可愛いね〜」

「どうも」

「いやいや、名前!教えてよ〜」

「聞いてどうするんですか?」

「仲良くなりたい」

「あ、それ、無理です」

「は?」

「私、ボッチが好きなんで」

「………」

「それに、彼がすぐヤキモチ妬くし」

淡々と突き放すように話す霞月に、男子学生はひいてしまう。

「可愛くねぇ…」
「なんか、冷めた…」

「………」
(可愛いって言ったり、可愛くねぇって言ったり…
どっちだよ!
冷めるのはこっちだっつうの!)
霞月は、心の中で一人突っ込んでいた。

そして(そう考えたら、実陽だけは違ったな…)と、思い出していた。

どんなに邪険にしても、纏わりつくようについて話しかけてきた。

『そうゆうツンケンしたところも、可愛い〜!
霞月ちゃんって、何してても可愛いね!』

よくこんな風に言っていたのだ。

「………」
(実陽に会いたいな…)

………って!
私も、実陽に依存してるし!

あんなに一人が好きだったのに、実陽に染められてる……(笑)

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