僕は彼女をこよなく愛している
そんな二人の出逢いは、二年程前。
高校2年になってすぐの頃だ。

実陽の高校と、霞月の高校の男女での合コン。

1年の時から霞月は、当時のクラスメートにしつこく合コンに誘われていた。

もちろん毎回断っていたのだが、あまりにもしつこいので“一度だけ”という約束でこの時は出席したのだ。

超絶美女の霞月。
案の定、実陽を含めた男子の注目を奪う。

その中でも実陽は、完全に一目惚れだった。

持ち前の明るさで何度も話しかけ、合コン後も高校に通い口説く日々。

『………ねぇ、一度でいいからデートしよ?』

『嫌』

『どうしてー?』 

『ウザいから。
一人が良いから』

『でも、一人は淋しいよ?』

『そう?
私はそんなふうに感じたことない。
むしろ、一人の方が気が楽』

『あ、いや、僕が言ってるのは“淋しい”って話だよ。
楽って話じゃないよ』

『………』

『“楽”って言ってる時点で、霞月ちゃんは“本当は淋しい”ってことでしょ?
確かに楽だもんね!一人って。
自由だし、気を遣わなくていいし。
でも、淋しい……!』

『………』

霞月は、不思議な気持ちに包まれていた。
こんなふうに言われたことがなかったからだ。

この言葉がきっかけで、霞月は実陽に興味を持つようになった。

そして一度、デートしてみた霞月。

とても、居心地が良かったのだ。

霞月は陰キャなのもあり、グイグイ来られるのが特に嫌いだ。
実陽はまさに“そんな男”だと思っていた。

しかし………

『静かなとこ行こ?』

『え?』

『霞月ちゃん、賑やかなの嫌いって言ってたから!
ゆっくりお茶して、ボーっとして過ごそうよ!
で、時々おしゃべりしてさ!』

『………そんなので良いの?』

『もちろん!
僕は、霞月ちゃんの傍にいられればそれで構わないよ?』

実陽は、霞月にとって全てが初めての感覚の男だった。

それもあり、霞月も少しずつ実陽に惹かれていったのだ。


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