僕は彼女をこよなく愛している
「――――では、一人三つのデザインを次の講義までに持ってくること!」

アツミ教授の講義で課題を出され、霞月はデザイン帳をパラパラとめくった。 
普段から、デザインを纏めていたからだ。

(三つか…
どれが良いかな?
実陽に相談してみようかな?)

そんな事を考えながら、講義室を出た。
「あれ?」

いつもなら、実陽が「るなちゃーん!」と抱きついてくる。
するとちょうど良く、実陽からメッセージが入ってきた。

【今、教授に呼ばれてて、教授の研究室にいます。
ごめんね!
できる限り人が多いところを通って、広場で待ってて!
僕も急いで向かうから!】

メッセージを確認し、広場に向かおうとすると……

「吉條さん!」

「え?あ…」
最近いつも声をかけてくる男子学生が声をかけてきた。

「彼氏は?」

「教授に呼ばれてるらしくて、今教授の部屋です」

「そっか!
じゃあ…今から一緒にデザイン考えない?」

「すみません。
私、もうデザイン出来てるので」

「あぁ!
確かに(笑)
デザイン帳に沢山書いてるもんね!」

「はい。
それに、すぐに彼が待ち合わせ場所に来ると思うので」そう言って軽く頭を下げ、歩みを進めた。

すると………
ガシッと、手首を掴まれた。

「え……?」

「どうしていつも、そんな素っ気ないの?」

「は?」

「せっかく可愛いのに!」

「性格です」

「損してるよ?」

「そうは思いません。
それに、例えそうだとしても“あなたには関係ないですよね?”」

そう言うと、掴んでいた男子学生の手に力が入った。

「ちょっ…い、痛い…!!」

「あ…ご、ごめんね!」

バッと離された手首。
見ると、薄く痕が付いていた。

「あの、もう私に話しかけないでください」

霞月は、男子学生を見上げ鋭い視線を向けて言った。
そして歩き出そうとすると「ま、待ってよ!」また、手首を掴まれた。

「ちょっと!
離してください!
それに、そこさっきのとこ!痛いです!」

眉間にシワを寄せる霞月に、男子学生は「ごめんね!そんなつもりはなくて……」と弁解しようとする。

「実陽!
実陽!助けて!!」

思わず、実陽に助けを求めると………

「何してんの?」

琢三がいた。


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