僕は彼女をこよなく愛している
街にあるスーパーに着く。

カートを押す霞月から、さり気なくカートを取った実陽。
「るなちゃん、僕焼きうどん食べたい!」と言った。

「………」

「るなちゃーん?
どうした?」

「ううん」
(“こうゆうとこ”ほんと、カッコいいな…!)

実陽は、いつもさり気なく助けてくれる。
カートを押したり、荷物を持ったり、ドアを開けたり……
さらりとやってのけるのだ。

だから霞月は、実陽の多少のワガママを聞いてもいいと思える。

生鮮食品などの食材や消耗品などを購入し、スーパーを出た。
「実陽」

「ん?」

「その袋持つから貸して?」
両手にエコバッグを持っている実陽に声をかける。

「でも重いから」

「私、トイレットペーパーしか持ってない。
それに、それ持ったら手を繋げるでしょ?」

「僕も手繋ぎたいけど…
………じゃあ…こっち!
こっちなら、比較的軽いから」

「ん」

「ありがと、るなちゃん!」

「当たり前でしょ?
それに“何でも一緒に”って言ったの、実陽だよ?」

「……/////
………はぁ…何、これ…//////」
顔を赤くし、息を吐く実陽。

「何?」

「るなちゃんが可愛すぎて、愛しすぎて、どうにかなる!!」

「は?何言ってるの?」

「あーもう!!
今!無性に、るなちゃんを抱き締めたい!!
くそ~、荷物さえなければぁーーー!!」

「こんなとこで抱きつかないで」
悶絶する実陽に表情が変わることなく冷静に言って、スタスタ歩いていく霞月。

「あー!るなちゃーん!
せっかく手ぇあいたんだから、お手々繋ご〜!」

そう言って実陽は、霞月を追いかけるのだった。


マンションに帰り着き、買ってきた物を整理する。
そしてそのまま霞月は、実陽のリクエストしていた焼きうどんを作り始めた。

「あ、るなちゃん!
僕もする!」

「うん、ありがと」

二人で、手際良く調理していく。
何でもそつなくこなす実陽と、家事全般するのが好きな霞月。

あっという間に焼きうどんとスープが出来上がった。

ローテーブルに並べ、ラグの上に並んで座って一緒に手を合わせた。

「「いただきまーす!(いただきます)」」
そして食べ始める。

「………」
「………」

食事中は、何故かシンとしている二人。

元々から大人しくほとんど喋らない霞月と、食事中は食事に没頭したい実陽。

二人の食べている音が、静かに部屋に響いていた。

< 5 / 72 >

この作品をシェア

pagetop