僕は彼女をこよなく愛している
「はい!もちろんです!」
酔っ払いの叔父家族の絡みにも、嫌な顔をせず微笑み大きく頷いた。

「つか、兄貴はいいの?」

「ん?」

「可愛い、可愛い俺達の霞月だぞ?」

「うん」

「こんな得体の知れない奴にやるの?」

「は?
得体は知れるぞ?
実陽くんは、良い子だしな!」

「は?
姉さんは?良いの?」

「えぇ!
実陽くん、可愛いし!」

「なぁ、霞月ー」

「何?」

「良いの?コレで?」

「人の彼氏を“コレ”って言わないでよ」

「じゃあ、この坊っちゃん」

「実陽が良い」

「えー!!
俺は?」

「は?イツキ(従兄)くんはやだ」

「なんで!?
俺、金はあるよ?」

「チャラい人は嫌い」

「いやいや…霞月のためなら、紳士に……」

「というより、イツキくんは実陽じゃないから」

絡んでくる親戚達に、淡々と答えている霞月。
実陽はその様子を感心して見つめていた。

「はぁ…てゆーか、こんなことばっか話すなら帰るよ?
実陽。まだ終電あるし、帰ろ?」

「は!?
待ってよ!!」
「悪かった!」

「カゲちゃん、お願い帰らないで?」

叔母の言葉に霞月はため息をつき、実陽に「ごめんね、気分悪くしてない?」と聞いた。

「ううん!楽しいよ!」

「は?嘘よそれ!
さっきから失礼でしょ?実陽に対して」

「本当に楽しい!
僕の家族は、こんなじゃないから……」

「実陽…」

「もっと話したい!
それで僕も、家族として受け入れてほしいから…!」

「うん、ありがとう」


「―――――ところで、実陽くんはカゲちゃんのどこに惚れたの?」

「そうですね~
やっぱ、真っ直ぐで純粋で、優しくてよく僕のことを見てくれるところですかね!」

「へぇ~
でもカゲちゃん、クールでしょ?
ほとんど笑わない……てか、君の前ではよく笑うのかな?」

「あ、あまり…
るなちゃんの笑顔は、あまり見たことないです…(笑)」

「やっぱり?(笑)
お義父さんにそっくりよね!」

クスクス笑う叔母に、霞月の母親も「そうね!」と笑った。

「えーと…おじいさんですか?」

「えぇ!
霞月は、お義父さん…つまり祖父にそっくりなの!
寡黙な人でね。
口数は少なくて、ほとんど笑わない。
でも、誰よりも優しくてみんなを包み込んでくれる素敵な人だったの!」

「そうなんですね!
るなちゃんにそっくりだ……!」

「霞月もおじいちゃん子で、大好きだったのよ!」


< 56 / 72 >

この作品をシェア

pagetop