僕は彼女をこよなく愛している
その日。
深夜になって漸くお開きになった、宴会。

実陽と霞月が布団に入ったのは、午前2時を過ぎていた。
「実陽、おやすみ」

「うん!おやすみ!」

実陽に頭を撫でられると、すぐに眠ってしまった霞月。
実陽は「早っ!(笑)」と笑うと、霞月の額にキスを落とした。

「…………
それにしても、不思議な家族だな…(笑)」

賑やかな人達の中で、霞月だけは淡々と食事をし、質問に答えていた。
親戚達に乱されることなく、ただクールに。

そしてみんな霞月を大切にし、互いに互いの幸せを願っていた。

「でも、良いなぁ〜!」

とても温かくて、癒される人達だ。
僕も、あの中に早く入りたい……!


「――――あれ?実陽くん?」

「え?あ!お義父さん!」

なかなか寝れなくて、縁側から外を見ていると霞月の父親に声をかけられた。

「寝れない?(笑)」

「あ…はい(笑)」

「おかしいなぁ〜、居心地の良い家なんだよ?ウチは!」

「あ、とても居心地の良いですよ!
ウチとは大違いです(笑)」

「………」

「……ん?お義父さん?」

「確か、離婚されたんだよね?君のご両親は」

「あ…はい」

「親父もそうだよ。
俺が高2の時に離婚したんだ。
お袋の不倫で」

「え?そ…なんですか…!?
ウチもです…!」

「でも………
親父は、それでもお袋を愛してた」

「そうですか…」

「俺と弟には、それが理解出来なくて…
ずっと、軽蔑してた。
弟なんか、それで荒れて荒れて大変だった(笑)」

「あ、僕と同じです…(笑)」

「でも、親父が亡くなる一年前かな…?
癌が見つかって、余命宣告された時。
親父が言ったんだ。
“俺の願いは一つだけ。母さんを、許してやってくれ”って」

「え……」

「余命宣告されても、裏切ったお袋の心配してて…
俺達、食ってかかったんだ。
“ここまで来て、何言ってんだ!!”って。
俺はその時、正直お袋への嫉妬もあった。
息子の俺より、裏切ったお袋を心配すんだ!って」

「ですよね…
なんか、わかります…」

「でも親父は……
“俺は、本気で母さんを愛してる”って」

「え?」

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