僕は彼女をこよなく愛している
「本気で愛した相手なら、たとえ裏切られても、傷つけられてもそれでも信じ、愛せる。
それが“本物の愛だ”って(笑)
寡黙な親父から“愛”なんて笑ったけど、親父の視線は何の汚れもなかった。
そして親父が“お前達もそんな相手に出逢えよ。それが遺言だ”って。
“それが本当の幸せだから。俺はお前等にそんな幸せを掴んでほしいと思ってる”って。
“俺は、母さんに出逢えたことが一番の幸せだ”って……!」

「………」

「実陽くん」

「はい」

「俺は、今“親父の気持ちがわかる”」

「え?」

「弟もそうだ」

「お義父さん…」

「もし、妻に裏切られても…
きっと俺は、妻を愛せる」

「………」

「君はどう?
霞月に裏切られたら、霞月を愛せなくなる?」

「………」
(るなちゃんに“裏切られたら……”)

「それがわかったら、君もお母様の気持ちがわかるんじゃないかな?」

意味深に言って、父親は「ふわぁぁぁー眠くなってきた…俺も寝るね〜おやすみ〜」と手をひらひら振って部屋に戻っていった。


実陽も部屋に戻り、霞月の隣に横になって霞月を抱き締めた。

霞月の頬に触れる。

“君はどう?
霞月に裏切られたら、霞月を愛せなくなる?”

霞月の父親の言葉が蘇った。

きっと僕は……
“それでもるなちゃんを嫌いになれない”

『でもね、お母さん。それでもお父さんと一緒に………』

今度は、母親の言葉が蘇った。

母さんは、父さんを“本気で愛してる”ってことか……


実陽は、微笑んだ。

霞月を更に抱き締める。
「るなちゃん…好き…//////
んーーー、好きぃーーー」

頬を擦り寄せ、グリグリしていると……

「んんっ…」
霞月が目を覚ました。

「あ…るなちゃん…?」

「ん…実陽…?」

「ごめんね、起こしちゃった…」

「寝なよ…」

「うん、ごめんね」

「おやすみ」

「おやすみ……!」

霞月が目を瞑り寝息が聞こえてきて、今度は実陽も眠りについた。

< 58 / 72 >

この作品をシェア

pagetop