僕は彼女をこよなく愛している
もちろん、霞月も実陽に会えないのは寂しい。

しかし元々は単独で行動することが好きな、霞月。
実陽の束縛には、息苦しさを感じていた。

実陽といることで、少しずつその感覚も少なくなってきてはいるが、やはり息苦しい時もある。

実陽が両親と会うと聞いて、正直楽しみにしていた。

霞月は街へ出て、服やアクセサリー、靴やバッグを購入した。

霞月の両手に、沢山の紙袋がぶら下がっていく。

「――――ありがとうございました〜!」

「よし!
これくらい…かな?」

近くのカフェに行き、ココアを飲みながら、紙袋の中身を覗く。

(実陽が一緒だと、買えないもんな…(笑))

霞月がショッピングを楽しみにしていた理由。

それは………買い物も当然実陽が毎回ついてくる。
一緒に行くのは構わないが、実陽は買う物一つ一つに口を出してくるからだ。

霞月が“着たい”と思う服は、ほとんど実陽が反対する。

なので全く買えない。

たまの一人の時間では、ゆっくり選ぶ時間がない。
なので、霞月はタガが外れたようにショッピングをしていた。


「ふぅ…」
(これ飲んだら、帰ろっと)

そんな事を考えていると、カフェの窓(霞月の横の窓)からコンコンとノックをする音が聞こえてきた。

「え?
………あ、琢三くん!?」
琢三が微笑み、手を振っていた。

「霞月、何してんの?
実陽は?」
霞月の向かいに座り、ウェイトレスに「ホットコーヒー」と言った。

「あ、実陽は実家です」

「実家!?
実陽が!?
あり得ねぇ…
それともお袋さん、なんかあったの?」

「お義父さんもいるみたいです…」

「あー、そうゆうこと!
でも親父さんに会うなんて、どうゆう成り行きなんだ?
あんなに嫌ってたのによ…」

「たぶん、私が言ったから…
“会ってあげて”って…」

「ふーん…」
頬杖をつき、意味深に霞月を見る。

「……な、なんですか…?」

「“そんなに”霞月のことが好きなんだなぁ〜と思って」

「え?」

「実陽の両親の離婚原因、知ってるよな?」

「あ、はい…
お義父さんの、不倫…ですよね…」

「あぁ。
しかも!3回目の、な?」

「え……」

霞月が目を見開き、固まった。

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