歌彦×5の略奪愛

見えない理由

「……行ってきます」

「行ってらっしゃーい」


 まだ着慣れない新しい制服を身にまとって、桜舞い散る境内(けいだい)を駆け抜ける。


 肌寒いくらいの春風が頬を撫でた。


 新しい学校生活がよいものになるように、一度、お参りをする。なにかの本番のときに、小さいころからしている願掛けのようなものだ。


 桜がきれいだなあ、とのん気なことを考えながら、私――神城(かみしろ)琴音(ことね)は鳥居をくぐる。


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