歌彦×5の略奪愛

 私は、今年の四月に高校一年生になったばかりだ。そして、昨日という昨日に、入学式を終えたばかり。


 ふつうなら緊張してしまうはずのシチュエーション。かくいう私は、緊張で、日本でのあいさつの言葉も忘れてしまいそうなくらいだ。


 ただの歩道で人とすれ違うたびに「ひっ」と声を上げそうになる。でも、それだと、変な人か、体調の悪い人に見られそうだから、必死にこらえている。


 大通りを進んでいくと、大きくてきれいな建物が見えてきた。これは病院。私の先輩のおうちが経営している病院だ。


 その隣にある、これまた大きな一軒家が、そのご家族の家ということ。


 私は、表のインターホンを鳴らした。
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