あやめお嬢様はガンコ者
久瀬くん、助けて!
「あやめさん、おはようございます!今日は定時で上がって私とデートですよー」

出社してくるなり、由香里ちゃんは明るく話しかけてきた。

「おはよう、由香里ちゃん。今夜はよろしくね。とっても楽しみ!」
「ふふっ、私もです。さーて!お仕事張り切っちゃいますよー」

笑顔で頷き合い、パソコンに向かって仕事を進めていく。
しばらくはこの薬事部の席のままだが、いずれは私も久瀬くんも別のフロアに移動することになる。
由香里ちゃんと離れるのは寂しいけれど、それまでにたくさんお話ししておきたかった。

いつにも増して集中し、定時までに仕事を終わらせると、由香里ちゃんと一緒にオフィスを出る。

「あやめさん、今夜はね、夜景がとっても綺麗なデートにぴったりのレストランなんです」

茶目っ気たっぷりな由香里ちゃんに、私は早くも楽しくなってきた。

「由香里ちゃんとデート出来るなんて、世の男性方に羨ましがられちゃうわね」
「あやめさんだってそうですよー。おい由香里、代わってくれって言われちゃう」
「えー、由香里ちゃんにそんな口きくなんて、どちら様?私が許さないんだから」
「あはは!私ってあやめさんに愛されてるー」

二人で笑いながら向かったレストランは、ヨーロッパの邸宅のようなガーデン付きのレストランだった。
小高い丘の上にあり、窓際の席からは美しい夜景が見下ろせる。

「綺麗な景色ね。由香里ちゃん、素敵なお店を予約してくれてありがとう」
「どういたしまして。私も一度ここに来てみたかったんです。でも彼氏は出来そうにないし、あやめさんにデートしてもらうことにしました」
「ふふ、由香里ちゃんとデートなんて嬉しい!今夜のお洋服も可愛いね」

パフスリーブのブラウスとひざ丈のフレアースカートは、同系色の淡いブルーで、5月の爽やかさと由香里ちゃんの可愛らしさによく似合っていた。

「由香里ちゃん、寒くない?カーディガン貸そうか?」

こんなに丈の短いスカートなんて履かない私からすると、身体が冷えるのではないかと気になってしまう。

「大丈夫ですよ。あやめさんはいつもパリッとしたオフィススタイルですけど、プライベートではどんなお洋服なんですか?」
「えっと、あんまり変わり映えしないわよ。カットソーとかブラウスに、ロングスカートが多いかな」
「ふうん。ね、今度一緒にお買いもの行きません?あやめさんを着せ替えちゃいたいー」
「ええ!?どういうこと?」
「私が選んだお洋服を着てみて欲しいんです。ね?いいでしょ?」
「うん、分かったわ。私も由香里ちゃんと一緒にお出かけしてみたい」
「やったー!約束ですよ?」

そう言って由香里ちゃんは、早速どこのお店に行こうかと考え始める。
運ばれてきたお料理も美味しく、私は終始由香里ちゃんと楽しい時間を過ごした。
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