あやめお嬢様はガンコ者
縁談と告白
翌週の木曜日。
私は行きつけのサロンでドレスに着替え、ヘアメイクも済ませてからハイヤーでパーティー会場のホテルに向かった。
久瀬くんは父と一緒に既に到着しているらしく、ロビーで落ち合うことにしている。
ホテルのエントランスで車を降りると、ドアマンがうやうやしくお辞儀をして出迎えてくれた。
微笑んで目礼してからロビーに足を踏み入れると、まばゆいシャンデリアが輝くラグジュアリーな空間に思わず背筋が伸びる。
今夜の私の装いは、初夏らしく涼し気なブルーのフレアドレス。
軽い素材で歩くたびにふわりと裾が揺れ、自ずと気分も明るくなった。
(和装も好きだけど、こういうドレスもいいな)
そう思いながらスカートに目をやった時、「あやめさん」と久瀬くんの声がした。
顔を上げるとフォーマルな装いの久瀬くんが歩み寄って来るのが見え、私は思わず目を奪われる。
髪型もアップバングで整えられ、スリーピースのスーツに鮮やかなブルーのネクタイとチーフ。
洗練された雰囲気とかっこよさに、周りの女性が久瀬くんを目で追っているのが分かった。
「あやめさん、見違えました。品があってすごく綺麗です」
「いえ、そんな。久瀬くんこそ、とても素敵です」
「本当ですか?あやめさんにそんなふうに言われるなんて、真に受けてしまいそうです」
「だって本当ですから」
視線を落としたまま、私はなるべく久瀬くんを見ないようにする。
(ダメだわ。こんなの、無理!目を合わせたら絶対に落ちちゃうじゃない、恋に。いけない、スローガンを思い出すのよ)
恋より早くお見合いを!と己に言い聞かせていると、久瀬くんがスッと私の隣に立って左肘を差し出した。
「あやめさん、行きましょうか」
「はい」
そっと久瀬くんの腕に手を添えて歩き出す。
「そう言えば、社長は?」
「先に会場に行かれましたよ」
「そうでしたか」
久瀬くんに寄り添って歩く今の私は、きっと真っ赤な顔をしているに違いない。
エレベーターに乗ると、ますます久瀬くんを意識してうつむく。
すると久瀬くんがクスッと笑った。
「あやめさん、今夜はしおらしくて可愛らしいです」
「は?いえいえ、あの。ご冗談を」
お願い久瀬くん、今は何も言わないで!
お見合いより先に恋に落ちる訳にはいかないの!
私は必死に真顔を作って耐え、エレベーターを降りた。
私は行きつけのサロンでドレスに着替え、ヘアメイクも済ませてからハイヤーでパーティー会場のホテルに向かった。
久瀬くんは父と一緒に既に到着しているらしく、ロビーで落ち合うことにしている。
ホテルのエントランスで車を降りると、ドアマンがうやうやしくお辞儀をして出迎えてくれた。
微笑んで目礼してからロビーに足を踏み入れると、まばゆいシャンデリアが輝くラグジュアリーな空間に思わず背筋が伸びる。
今夜の私の装いは、初夏らしく涼し気なブルーのフレアドレス。
軽い素材で歩くたびにふわりと裾が揺れ、自ずと気分も明るくなった。
(和装も好きだけど、こういうドレスもいいな)
そう思いながらスカートに目をやった時、「あやめさん」と久瀬くんの声がした。
顔を上げるとフォーマルな装いの久瀬くんが歩み寄って来るのが見え、私は思わず目を奪われる。
髪型もアップバングで整えられ、スリーピースのスーツに鮮やかなブルーのネクタイとチーフ。
洗練された雰囲気とかっこよさに、周りの女性が久瀬くんを目で追っているのが分かった。
「あやめさん、見違えました。品があってすごく綺麗です」
「いえ、そんな。久瀬くんこそ、とても素敵です」
「本当ですか?あやめさんにそんなふうに言われるなんて、真に受けてしまいそうです」
「だって本当ですから」
視線を落としたまま、私はなるべく久瀬くんを見ないようにする。
(ダメだわ。こんなの、無理!目を合わせたら絶対に落ちちゃうじゃない、恋に。いけない、スローガンを思い出すのよ)
恋より早くお見合いを!と己に言い聞かせていると、久瀬くんがスッと私の隣に立って左肘を差し出した。
「あやめさん、行きましょうか」
「はい」
そっと久瀬くんの腕に手を添えて歩き出す。
「そう言えば、社長は?」
「先に会場に行かれましたよ」
「そうでしたか」
久瀬くんに寄り添って歩く今の私は、きっと真っ赤な顔をしているに違いない。
エレベーターに乗ると、ますます久瀬くんを意識してうつむく。
すると久瀬くんがクスッと笑った。
「あやめさん、今夜はしおらしくて可愛らしいです」
「は?いえいえ、あの。ご冗談を」
お願い久瀬くん、今は何も言わないで!
お見合いより先に恋に落ちる訳にはいかないの!
私は必死に真顔を作って耐え、エレベーターを降りた。