あやめお嬢様はガンコ者
初デート
「あやめさん、週末一緒に過ごせませんか?」
あの日から仕事終わりに夕食を一緒に食べるようになった久瀬くんが、帰りのタクシーの中でそう切り出した。
「えっと、予定はないので大丈夫です。どこかに出かけるの?」
「はい。あやめさんが行きたいところ、考えておいてくださいね。それと、夜は俺のマンションで一緒に夕食作りませんか?」
私は思わず久瀬くんと繋いだ手をピクッとさせてしまった。
(夜に、久瀬くんのマンションに?そ、それってもしや、お泊りってこと?)
いやいや、そう言われた訳ではないし勘違いなら恥ずかしい。
小さく首を振っていると、久瀬くんが顔を覗き込んできた。
「あやめさん?ダメかな?」
「だ、大丈夫です!行きます、夜に、久瀬くんのマンションに」
「良かった。俺、どうしてもあやめさんの手料理が食べたくなって。外食しても絶対あやめさんの方が美味しいって思っちゃうんですよね。また作ってくれますか?」
「はい!喜んで!」
「嬉しいです。なんか気合い入ってますね」
「もちろんです。ご注文は?何を作りましょう」
「はは!一緒にスーパーに行って考えましょうか」
「かしこまりました」
何とかお泊りから気をそらそうと、私は料理の話題に集中する。
(えっと、エプロンも持って行こう。あと、パジャマは?歯ブラシとか着替えは?どうしよう)
すぐまたお泊りに気がいってしまった。
久瀬くんに聞こうかと顔を上げると、ん?と久瀬くんが微笑みかけてくれる。
(いや、やっぱり聞けない!だって期待してますって言ってるようなものだもの。でもどうしよう。一応、持って行く?念の為、万が一の為に)
あー!でも違ったら恥ずかしい!と、私は頭の中で堂々巡りをする。
「あやめさん?どうかした?」
「いいえ!何でもないの。えっと、週末楽しみにしています」
「俺も、すごく楽しみです」
久瀬くんの笑顔に見とれて、私は胸がキュンとする。
自宅に着くと、いつものようにタクシーを降りて向かい合った。
「じゃあ、おやすみなさい、あやめさん」
「はい、送ってくれてありがとう。おやすみなさい、久瀬くん」
そう言うと私は顔を上げてそっと目を閉じる。
久瀬くんはクスッと笑ってから頬にチュッとキスしてくれた。
(え、待って。久瀬くん今、クスッて笑ったよね?それって……)
私が当然のようにキスをおねだりしたからだ、と分かり、途端に顔が真っ赤になる。
「で、では、また」
そそくさと背を向けて門の中に入り、タタッと小走りで玄関にたどり着いた。
振り返ると久瀬くんはいつもと同じように見守ってくれている。
私も小さく手を振って玄関に入った。
あの日から仕事終わりに夕食を一緒に食べるようになった久瀬くんが、帰りのタクシーの中でそう切り出した。
「えっと、予定はないので大丈夫です。どこかに出かけるの?」
「はい。あやめさんが行きたいところ、考えておいてくださいね。それと、夜は俺のマンションで一緒に夕食作りませんか?」
私は思わず久瀬くんと繋いだ手をピクッとさせてしまった。
(夜に、久瀬くんのマンションに?そ、それってもしや、お泊りってこと?)
いやいや、そう言われた訳ではないし勘違いなら恥ずかしい。
小さく首を振っていると、久瀬くんが顔を覗き込んできた。
「あやめさん?ダメかな?」
「だ、大丈夫です!行きます、夜に、久瀬くんのマンションに」
「良かった。俺、どうしてもあやめさんの手料理が食べたくなって。外食しても絶対あやめさんの方が美味しいって思っちゃうんですよね。また作ってくれますか?」
「はい!喜んで!」
「嬉しいです。なんか気合い入ってますね」
「もちろんです。ご注文は?何を作りましょう」
「はは!一緒にスーパーに行って考えましょうか」
「かしこまりました」
何とかお泊りから気をそらそうと、私は料理の話題に集中する。
(えっと、エプロンも持って行こう。あと、パジャマは?歯ブラシとか着替えは?どうしよう)
すぐまたお泊りに気がいってしまった。
久瀬くんに聞こうかと顔を上げると、ん?と久瀬くんが微笑みかけてくれる。
(いや、やっぱり聞けない!だって期待してますって言ってるようなものだもの。でもどうしよう。一応、持って行く?念の為、万が一の為に)
あー!でも違ったら恥ずかしい!と、私は頭の中で堂々巡りをする。
「あやめさん?どうかした?」
「いいえ!何でもないの。えっと、週末楽しみにしています」
「俺も、すごく楽しみです」
久瀬くんの笑顔に見とれて、私は胸がキュンとする。
自宅に着くと、いつものようにタクシーを降りて向かい合った。
「じゃあ、おやすみなさい、あやめさん」
「はい、送ってくれてありがとう。おやすみなさい、久瀬くん」
そう言うと私は顔を上げてそっと目を閉じる。
久瀬くんはクスッと笑ってから頬にチュッとキスしてくれた。
(え、待って。久瀬くん今、クスッて笑ったよね?それって……)
私が当然のようにキスをおねだりしたからだ、と分かり、途端に顔が真っ赤になる。
「で、では、また」
そそくさと背を向けて門の中に入り、タタッと小走りで玄関にたどり着いた。
振り返ると久瀬くんはいつもと同じように見守ってくれている。
私も小さく手を振って玄関に入った。