殺したいほど憎いのに、好きになりそう

ラッキースケベ?


 中学生の勉強とは言え、何がなんだか分からない。
 特に数学と理科の授業は、教師の言っていることが全く頭に入らない。
 こんなんで俺はちゃんと中学を卒業できるのだろうか?
 さすがに留年とかは、無いよな。

 二時限目までの授業が終わり、中休みに入った。
 授業についていけない俺は、机の上におでこをつけて、頭を冷やす。

「マジで積みゲーじゃん……」

 そう呟くと、後ろの席から優子ちゃんが顔を出す。

「藍ちゃん、どうしたの?」

 振り返ると、優子ちゃんの姿が一変していた。
 いつの間にか、セーラー服から体操服へと着替えていたからだ。
 
「あっ、JCの生ブルマ」

 つい言葉に出してしまう。
 前世じゃ、もう絶滅危惧種だからな。
 優子ちゃんはまだまだ幼児体型で、低身長だから胸は無いけど。
 これはこれでOK! 眼福だなぁ……なんて考えていると、優子ちゃんに叱られた。

「もう、藍ちゃん。何をボーっとして! 早く着替えなよ、次は体育の授業だよ」
「あ、そっか……」

 気がつけば、周りの生徒たちはその場で制服を脱ぎ出している。
 なるほど。小学校の時みたいに中学校も男女一緒に、クラスで体操服に着替えるんだな。

 俺も急いでイスから立ち上がり、カバンから体操服とブルマを取り出す。
 そしてセーラー服を脱ぎ、カッターシャツのボタンを外していくと……。
 ダサいファーストブラが露わになる。つまり、ふくよかな谷間も見えてしまう。

「な、なにやってんの!? 藍ちゃん!」
「へ? だって着替えるんでしょ?」
「体育の授業なんだから、家で体操服を着て来るのが普通でしょ! 胸が見えてるよ!」
「え……そうなの?」

 優子ちゃんが騒ぐから、周りにいた男子の視線が一気に俺へと向けられる。
 特に胸のあたりを……。
 ただ、隣りに座っていた鬼塚だけは頬を赤くして、視線を床に落としている。

「早く隠して!」
「あ、うん……」

 優子ちゃんに言われるまで、ずっと自身のたわわな胸は放置したままだった。
 急いでカッターシャツのボタンを閉めると、優子ちゃんが「一緒に来て」と教室から連れ出す。
 俺の体操服とブルマを持って、女子トイレまでやって来た。
 中に入ると「個室のトイレで着替えなさい!」と怒られてしまった……。

「ちきしょう……お母さんが言っていた体育の話って、これのことだったか」

 ようやく着替え終わると、優子ちゃんの姿が見えない。
 代わりに立っていたのは赤白帽子を被った少女。
 目力の強い、オールバックポニーテール。
 鞍手 あゆみだ。

 下から俺のことを睨んでいるように見える。

「フンっ……わざとらしい」

 と鼻で笑うと、トイレから出て行った。
 なにを言いたかったんだ?
 それにしても、前世とは態度が違いすぎるだろ。俺のことを嫌ってんのかな。

 一応、トイレで着替えたから、手洗い場で手を洗っていると。
 別の個室から優子ちゃんが出てきた。

「ご、ごめん……鞍手さんがいきなり入ってきたから、逃げちゃった」
「そんなにあゆみちゃん……鞍手さんて怖いの?」
「怖いよっ! 男の子には甘えた声で話すのに、女子には思ったことをポンポン言うし……」
「ふぅーん」

 前世では、陰キャでオタクの俺でも、あんなに優しくしてくれたのにな。
 顔も可愛かったし、あの子以外女の子と触れたことないから。
 何度、お世話になったことか……。
 
 あゆみちゃんルートは、存在しないのかな? この世界。
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