不実な自由
私は、一歳三か月でオムツがとれてしまった優等生ベビーだった。そんな私もすくすく育ち、私が一番最初に記憶したであろう出来事は万国博覧会に家族と出かけたことだ。当時、私は二歳六か月。私は祖父に抱かれ、シンボルマークの塔の目の中にひとがはいっていたとは知らず「お猿さんが入ってる」と叫んだ。そしてこの時から私は家庭内の複雑さに巻き込まれることとなっていった。
小さな私の記憶の中で父と祖父の怒鳴り声が聞こえる。それは私にとって隠さなくてはいけない確信として心の奥にしまった。
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