恋雪
私はとりあえず重たい上半身をなんとか起こす。

「彼女には私の酒癖のこと黙っててよ」

「ばーか。言えるかよ」

健斗が呆れながらも僅かに口角を上げる。

それは私の言葉に笑ったのではなくて、きっと彼女のことを思い出したから。

健斗は優衣さんと結婚する。健斗が好きなのは優衣さん。わかっているのに私のコンプレックスのひとつである小さな胸はズキンと痛む。

(あーあ。いいかげんにしたい) 

もう健斗のことなんて1ミリも考えたくなんてないのに。ふわふわと想いも考えもまとまらないのに頭の中は真っ白にならない。いっそ雪みたいに真っ白になって溶けてしまえばラクなのに。

いつからだろう。

振り返れば、私の今まで生きていた時間の中で健斗のことを考えてる時間は多かった。考えても仕方ないのに。想っても叶わないのに。

終わりにしたい。恋の始まりは見つけられるのに恋の終わりはどうやって皆、見つけてるんだろうか。





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