歩くリラ冷えの風


五月風が通り、まだ少し冬の名残が残っている冷たさを感じる札幌。

教室の窓からそんな風が入り込み、少し身震いをする学ラン姿の小日向翔真は、廊下側から2列目の一番前の机で頬杖をつきながら、教室の前側の開いている扉の向こうの廊下を見つめていた。

すると、1組の教室がある方向に歩いて行く目的の人物を見つけ、翔真は慌てて席を立ち、廊下に出た。

「おい!里佳!」

翔真がそう呼んだのは、2ヵ月前から付き合い始めたばかりの翔真の彼女、鈴木里佳のことだ。

翔真は険しい表情を浮かべながら、里佳に一歩一歩、歩み寄って行った。

「翔真、何よ。」

面倒くさそうな口調でそう言う里佳。

その里佳の態度に更に苛立ちが増した翔真は、拳に力がこもった。

「お前、浮気しただろ!しかも、門倉と!」
「だからぁ、あれはちょっとした気の迷いで、謝ったでしょ?」
「でも、そのあとも二人で会ったりしてるだろ!」

翔真の言葉に溜め息をつき、「はい、会いました。すいませんでした〜。これでいい?」と全く反省の色を見せない里佳。

すると、そこに「何喧嘩してんだよ。」とやって来たのは、高3のくせにブランド物で身を固めた門倉和也。

門倉はこの札幌北風高等学校、通称"風高"で喧嘩が強いと有名なヤンキー気取りな生徒だ。

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