怜悧な裁判官は偽の恋人を溺愛する

美容部員の本領発揮

「あずささん、本当に大丈夫ですか?」

 私の隣を歩きながら、優流は心配そうに言った。

 三日前、私は優流を通して真子からお茶のお誘いを受けていた。彼女は友人を集めてカフェやホテルでお茶会をするのが趣味なようで、そこに誘われたのである。

 以前参加した懇親会のように、真子からいびられることは明らかだ。しかし、優流と交際するとなれば、今後彼女と顔を合わせることも多い。そのため、私は思い切って参加することを決めたのだ。

 優流は待ち合わせ場所までの付き添いだが、彼は私を心配してくれているようだった。

「ふふっ、ご心配なく。真子さんと仲良くなる良い機会ですし、今日はお化粧も気合いを入れてきたので。それに……」

「?」

「買ってもらったワンピース、着なきゃもったいないじゃないですか」

 そう言って、私はおろしたてのワンピースの裾を軽く摘んだ。

 懇親会で真子に服装と化粧の駄目出しをされたこともあり、お茶会の参加を決めたあと、優流は私にワンピースを一着買ってくれたのである。

 膝丈のミントグリーンのワンピースは、上質な厚い生地でできているためシルエットがとても美しい。今日はホテルでアフターヌーンティーを楽しむ予定だが、ホテルに行っても悪目立ちすることはないだろう。

 やがて、私たちは待ち合わせ場所のホテルの前にたどり着く。見ると、真子や彼女の友人二人はホテルのロビーに集まっていた。

「すみません、遅くなりました」

「あら、高階さん……っ!?」

 私が挨拶すると、真子はあからさまに驚いていた。
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