怜悧な裁判官は偽の恋人を溺愛する
 ケーキは紅茶色のクリームでデコレーションされており、柴犬の顔の形になっていたのだ。

 柔らかいクリームで犬のフワフワした毛並みが再現されており、前面にはチョコレートで目鼻と口顔が描かれている。

 その可愛らしい顔は、実家で飼っているペットの柴犬そっくりであった。

「喜んでもらえて良かった。いつもバッグに柴犬のキーホルダーを付けてるので、柴犬がお好きだと思ったんですよ」

「そうなんです。実は私、実家にペットの柴犬がいて……柴犬のグッズを見つけたら、つい買ってしまうぐらい大好きなんです」

 優流の言うおり、私が通勤に使っているA4サイズのトートバッグには、柴犬のチャームがひとつ付けてある。今まで会話の話題に出していなかったが、どうやら彼は気づいてくれていたようだ。

「名前は何て言うんですか?」

「子犬の時にとっても小さかったので、豆蔵って名前なんです。今はすっかり、大きくなりましたけど」

 スマートフォンのロック画面に設定した豆蔵の写真を優流に見せながら、私は言った。

 そこでふと、私は優流の頼んだケーキに目を向けた。彼は白イチゴのショートケーキを頼んでおり、それは可愛らしいネコの形にデコレーションされていた。

「もしかして、御堂さんもご実家でペットを飼われてたりします?」

「ええ。実家ではネコを二匹飼ってます」

 そう言って優流もスマートフォンを開き、猫たちの写真を見せてくれた。

 ハーブティーはカップに注ぐ前に、三分ほどティーポットで蒸らすことになっていたが、会話に花が咲いてその時間もあっという間に過ぎていった。
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