怜悧な裁判官は偽の恋人を溺愛する

触れ合う気持ち

「凍らせた生クリームを乗せるだけで、ココアがこんなに美味しくなるんですね」

 アイスココアをひと口飲んで、優流は驚いたように目を丸くした。

「ふふっ、そうでしょう?」

 優流との同居を始めてから早三日。私は平穏な日々を過ごしていた。

 話し合った結果、私は彼が仕事で不在の間に掃除や洗濯などの家事をすることにした。今日の朝食の用意も、自分が担当していた。

 外出を控えている私に代わって、優流はは買い物を担当してくれている。この生クリームも、昨日彼に頼んで買ってきてもらったのだ。

「絞るだけのホイップクリームなら泡立てなくて良いので、手軽に楽しめますよ」

「なるほど」

 昨日のうちに凍らせておいた生クリームをアイスココアに乗せて、デザート代わりにしたところ、どうやら優流は気に入ってくれたようだった。

「そう言えば、百貨店の近くにある花宮ホテルで期間限定のアフタヌーンティーが開催されるって聞きましたか?」

「え、知らないです!」

「夏に向けた南国フルーツのアフタヌーンティーらしくて、けっこう美味しそうなんですよ」

 朝のニュース番組を見ながら、たわいのない会話が続く。デートをしている訳ではないけれども、それだけで私は十分に幸せを感じていた。

「それじゃあ、行ってきます。また何かあれば連絡してください」

「ありがとうございます。じゃあ、お気をつけて」

 優流を仕事に送り出したあと、私は掃除を始めた。
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