モノノケモノ
「あ、人違いをしただけで……すいません」


「いえ、こちらこそ、突然の訪問申し訳ありません」


私が謝ると、彼女はあわてたように手を振った。

しばらくの沈黙の後、私が口を開くと、彼女も同じタイミングで何か言おうと口を開いた。

タイミングの良さに顔を見合わせて笑う。

ひとしきり笑って、私のほうから声をかけた。


「あの、何か御用ですか?

祖母、呼んできましょうか?」


また彼女はあわてて手を振り、早口で言った。


「いえ、今日は由香さんに用事があったんです。

私は、猫族の日和子(ヒワコ)っていいます。

由香さんにちょっとお願い事があるんですけど、いいですか?」


「ええ。

いいですけど、なんですか?」
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