モノノケモノ
焦った。

猫族の誰かが潜んでいたのかと思った。

動きを止めてあたりをうかがう。

ずいぶん派手な音がしたと思うが、本殿の前で見張りをしていた猫族の二人組みが駆け込んでくる気配はない。


「切れる……わけないよね」


鎖をちょいちょいっと引っ張ってみるが、切れる気配はない。

足首に巻いてある部分の鎖に一箇所切れ目を見つけたが、その隙間を広げて鎖を切り離す作業は20秒で諦めた。

鎖の輪が小さすぎて、私の指の太さでは太刀打ちできない。

あいにく爪も切ったばかりだし。

私は爪を切る時は深爪ぐらい深く切る派なのだが、今回はそれが災いした。

もちろん、見回した範囲にはペンチは見つからない。
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