モノノケモノ

第二章 カラス

「あ、お客さん」


私はパタパタと廊下を走る。

私の部屋は玄関から一番遠いから、自然と客を待たせることになる。

「ピンポーン」ともう一度チャイムが鳴った。

「はいはいはいはいはーい」


裸足のままで扉をガラガラっと開ける。

うちは建物が純和風なので当然扉も横開きなのだ。


「はー……」

い、と言おうとしたが、目の前にいる人があまりに険しい顔をしているので固まってしまった。

オールバックに切長で威圧感たっぷりの目、細長い銀ぶちの眼鏡をかけている。

キリッとした眉に、着ているのは真っ黒なスーツだ。

その人が、口を開いた。


「鬼の子を返しなさい」