モノノケモノ
「はじめまして甚郎さん。

今日うかがったのは、鬼の子について尋ねるためです」


猫族に緊張が走ったのがわかった。

今までぴくりとも動かなかった甚郎さん以外の猫族が、隣どうしでひそひそと話し合っている。

何か悪いことを言ったのか。

とにかく続けることにする。


「この秀は、たぶんご存知だと思うんですが、鬼の子なんですよね。

この子の母親は狐なんですが、父親についてご存じないかと思いまして」


私がそういった瞬間、甚郎さんの右側に座っていた猫が「てめぇ!」と怒鳴りながら立ち上がり、私に掴みかかってきた。

すると、今まで黙って座っていた秀が、猫の腕が私に触れる少し前に猫のお腹辺りに手を置いて押しとどめ、そのままの勢いで入り口に投げ飛ばした。

そして何事もなかったように元の位置に戻り、座る。
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