モノノケモノ
「えぇと、それはー、……目の錯覚じゃない?」


「そっか」


彼はそれ以上の追求はせず、また歩き出した。

方向からして、私を家まで送ってくれる気らしい。

え?

なんで?

すごく気にならない?

目の錯覚ってことでいいの?

彼が言わないのに私が追求するのもおかしいので、私も黙ってついていく。


「じゃあな」


いつの間にか家の前にいた。

玄関に向かう私に彼は、あ、そうだ、と声をかけた。


「オレ、瀬川(セガワ)啓吾(ケイゴ)。

お前は?」


「え、木本由香」


「木本、オマエ学校行けよ。

前行ってた学校がイヤなら、こっちの中学行けばいいじゃん。

あんま紫乃ばあちゃんのこと困らせんなよ」


そういうと、彼はもう一度じゃあな、と言って、今度こそ去っていった。
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