モノノケモノ
「おねぇちゃん!」


秀が私の遥か下から必死な顔でこちらを見上げている。

肩が痛い。

見上げても何も見えないが、かすかに羽ばたく音が聞こえる。

まさかカラス族はあの小さな羽で飛ぶのか。


「ちょっと!下ろして!」


痛む肩の少し上を拳で叩くと、何かに当たる感触があった。

やっぱり鬼の子がいるんだ。

鬼の子の怒りの矛先がこっちを向いたんだ。

私の攻撃はなんの影響も及ぼしていないらしく、鬼の子はさらに空高く昇っていく。

が、鬼の子は突然「ギャッ」と叫び、私をつかんでいた手(または足)を離した。

確実に死ぬであろう高度から重力に逆らうことなく落ちていく私は、短かった人生をしっかり振り返った。

母さん、ばあちゃん、先立つ不幸をお許し下さい。
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