モノノケモノ
翔太って誰だ、と思ったが、すぐに牢にいる鬼の子のことだと見当がついた。

カラスはみんな『あれ』とか言っていたが、ちゃんと名前があったんだな。

私がぼんやりしているうちに、周りのカラス達は口々に「異議なし」とか言っていて、あっという間に裁判は終わっていた。

あれだけ待ったのにこれで終わり……緊張したのに損した。

が、私を見てニコニコしている秀を見ていると不満も吹っ飛んだ。

一緒にニコニコしていると、目の前に日垣さんが立っていた。


「おい、秀」


「なに?」


「お前どこで住むんだ?

このまま由香の家に住むのか?」


秀がこくりと頷く。


「ふーん。

じゃ、よそで住みたくなったらいつでも言えよ。

じゃあな」


そういうと日垣さんはさっさとどこかへ行ってしまった。
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