モノノケモノ
「あの、鈴香さん、私、この子に勝手に名前付けちゃいました。

そうしたら約束の範囲に入るからって教えてもらって。

ごめんなさい。

名前を付けるのは親の役目なのに……」


「いいのよ」


鈴香さんはにこりと笑った。


「そうしてもらおうと思って由香ちゃんの家に行ったんだから。

なんていう名前にしたの?」


「しゅうです。優秀の秀」


「そう。ありがとう、引き受けてくれて」


「そうと決まったわけではありませんよ」


月浦さんが、私の肩を掴んでゆっくりと鈴香さんから引き離す。

見上げると、彼は私の家に来た時の冷たい目をしていた。


「彼女はこれから成長した鬼の子を見ます。

あなたの子供を我々に引き渡す可能性もまだ十分にあるのです」


「月浦さん!」


「行きますよ。

あなたが族長に言われたことの中に、鈴香に会うことは含まれていないはずです」


冷たい目の月浦さんは、ここにとどまるつもりはないようだった。

こちらを振り向くことなく、奥へと進んでいく。


「鈴香さん!大丈夫だから!

絶対手放さないよ!」


月浦さんを追いかけながら鈴香さんに向かって叫んだ。

ちらりと振り返ると、鈴香さんの手が檻を掴んでいるのが見えた。

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