モノノケモノ
それを月浦さんに問うことは出来なかった。

質問したら、月浦さんは私を族長に会わせたことを後悔する。

私は自分でモノノケの常識を変えようと思ってここに来たのに、これを聞くことは出来ない。

腕の中の秀をちらりと見る。

秀もこちらを見ている。

そういえば、あの檻からここに来るまでの間、ずっと秀が泣いていた気がする。

目の前のホットミルクをずずっとすすって、小さな声で「よしっ」と気合を入れる。

ここまで来て引き下がれるものか。

鈴香さんにも、手離さないと言ったんだ。

精一杯の笑顔を作って月浦さんを見て言う。


「鬼の子を見せてくれてありがとうございます。

でも、私は秀を育てますから」


月浦さんはほっとしたような、納得がいかないような、微妙な表情をした。


「あれを見てもそう言うのですね」


私はしっかりとうなずく。


「はい」


ふう、と月浦さんは溜息をつき、立ち上がった。


「それでは、族長にはそのようにお伝えします。

家までお送りしましょう」


私も立ち上がる。不安だったが、正しい選択をしたと思いたかった。
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