モノノケモノ
家に帰った私を迎えてくれたのはカナ爺だった。

私の顔を見るなり駆け寄ってきて、


「どうしたんじゃ、顔が真っ青じゃぞ」


と言った。

なるべくそちらを見ないように靴を脱ぎ、家に上がる。


「いや……。

なにもないんだけれどちょっと疲れたみたい」


居間に戻り、秀を座布団の上に乗せてその横にごろりと寝転がる。

月浦さんには勇ましいことを言ったが、意外と私も気が弱いらしい。

後ろからついて来ていたカナ爺が私の足元に座った。


「日垣になんか言われたんか」


「日垣って誰?」


「カラス族の族長じゃよ。

なんじゃあいつ、名前も名乗っておらんのか」


ああ、あの人日垣というのか。結局名前を本人から聞けなかった。

私は起き上がってカナ爺と向き合った。


「違うよ。

族長さんのせいじゃない。

……鬼の子を見たんだ。牢屋の奥深くに閉じ込められてた」


カナ爺の顔色がさっと変わった。

いつも何事にも動じないカナ爺なのに、こんなこともあるんだな。
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