この恋、遊びにつき。
顔がどんどん赤くなる。

鼓動がどんどん早くなる。

目の前に相手がいるなら、「バーカ」とでも言ってそっぽを向くけれど、電話越しじゃそうも出来ない。

何か反応しなきゃ、と思うのに言葉が出てこない。



「・・・ごめん、うまくいえない」


ようやく搾り出した言葉がコレ。

何だそれ、と自分で突っ込む。



「かわいいね」


そう言ってクスクス笑う。



「keiさんは慣れてるかもしれないけど、私は初めてなんです!こういうの!」


「こういうのって?」


「見知らぬ人と、電話するの」


「俺だって初めてだよ」


「嘘だ」


「いや、本当だよ。初めて」


「じゃあ何でそんな落ち着いてるの?」


「落ち着いてないよ、すごく緊張してる」


「嘘だ」


「だから本当だって。俺今手震えてるよ」


「そうなんだぁ」


「結衣さんは?」



結衣・・・あ、私のことか。

まだ自分が「結衣」だということに慣れない。

文字上で呼ばれるのと、実際呼ばれるのとではやっぱり違う。

自分のものになり切れてないその名前に違和感を覚えた。



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