この恋、遊びにつき。
帰り道、ふと携帯を開いてみる。




電話帳のヤ行に、もう結城先生はいない。

だけど頭が覚えてる。

先生の番号も、先生のアドレスも。






『忘れる必要なんかないさ。

いつか時期がきたら風化する。』




私が失恋した時、先生がそう言って抱きしめてくれた。



先生。もう勉強はいいから、
恋の風化のさせ方を教えてください。


せんせい。

せんせい。




もう呼んでも、振り向いてくれない。






そんな人の面影を追いかけて生きてるあたしは、なに?






悠さんをみると、先生の思い出が付きまとう。

やだな。

あんまり、もう会いたくない。





…でもどこかで、期待してる。

悠さんが持ってきてくれる、懐かしい先生の思い出に浸ることを。








< 86 / 109 >

この作品をシェア

pagetop